<社説>参院選・多様性 寛容な社会の実現を


社会
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 ジェンダー平等の実現が求められ、家族の在り方も多様化している。憲法は個人の尊重を保障するが、戦前の家制度に基づく規定が法律に残り、不利益に直面する人もいる。性自認について理不尽な差別に苦しむ人もいる。

 参院選では選択的夫婦別姓や同性婚など社会の多様化にどのように対応するかという論点も問われている。
 政権党の自民と他党との違いは鮮明だ。同性婚についてはパートナーシップ制度を含め、与党の公明を含めた各党が認めるべきだとする。性的少数者へ理解を深めるための法案についても各党が差別の禁止など対応を掲げる。
 自民は同性婚の法制化については認められないとの立場。性的少数者については総合政策集に「理解増進」と項目を立てたが、「時勢に応じた法制度等の見直しを行う」との書きぶりにとどまった。
 選択的夫婦別姓については国民の間に理解が広がっている。昨年の衆院選の当選者アンケートでも、夫婦別姓を選択できる制度導入について「賛成」は57・5%で、「反対」22・9%を上回った。
 立民、共産、国民、れいわ、社民が「実現」「導入」を掲げ、与党の公明も「導入を推進」、日本維新の会は「同一戸籍・同一氏」の原則を維持しながら「旧姓使用にも一般的な法的効力を与える制度の創設」、NHK党は導入の前段階として例外的にそれぞれの旧姓を名乗ることを認める制度の検討を主張している。
 一方、自民は「氏を改めることによる不利益に関する国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益をさらに解消する」としているが、具体策は判然としない。
 夫婦別姓は民法が「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」として認めていない。
 この規定を巡っては、最高裁が2015年と21年、2度の合憲判断を示している。しかし、15年は裁判官15人中5人、21年は4人が違憲とした。激しい議論があったことをうかがわせる。国会に立法論議を促しているといえる。
 民法の規定について、国連女性差別撤廃委員会は「差別的」だとして03年から繰り返して是正を勧告している。21年の大法廷は姓を巡る制度の在り方について「国会で議論、判断されるべきだ」として立法府の取り組みを促している。政治の責任は重い。
 沖縄選挙区で事実上の一騎打ちを繰り広げている伊波洋一氏と古謝玄太氏は選択的夫婦別姓の導入についていずれも「賛成」の立場だ。
 同性婚については伊波氏が「認めるべき」、性的少数者への理解を深めるための法案について「賛成」とした。古謝氏はいずれについても「どちらともいえない」とし、判断に向けては議論を深める必要があるとの考えだ。
 多様性を認める寛容な社会をどのように推進するか、有権者の選択にかかっている。