<社説>参院選・伊波氏再選 新基地反対を選択した


社会
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 第26回参院選で「オール沖縄」勢力が支援する無所属現職の伊波洋一氏が接戦を制して当選した。

 選挙戦は、米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設の是非や沖縄振興、経済対策などが争点となっていた。新基地建設について伊波氏は反対し、古謝玄太氏は容認する立場で、違いは鮮明だ。伊波氏の当選によって有権者は建設阻止を支持したことになる。
 選挙結果は9月に実施される県知事選に大きな影響を与える。「オール沖縄」勢力は今年に入って市長選で連敗が続いていたが、伊波氏の当選で玉城デニー知事の再選に向け弾みがつくことになる。
 沖縄選挙区は、米軍普天間飛行場の移設を巡る名護市辺野古の新基地建設問題が争点となった。伊波氏は「県民にこれ以上の過重な基地負担を押しつけるべきではない」として計画に反対した。
 沖縄振興策の在り方も問われた。沖縄振興に向けて政府が予算や制度などを担保する第6次沖縄振興計画(沖振計)が本年度から開始した。振計はこれまで第5次、50年間続き約13兆円の振興事業費が投入された。自立経済を目指したものの逆に財政に依存する経済構造に陥っている。
 伊波氏は全国平均よりも低い県民所得や全国の2倍に上る子どもの貧困率を挙げて、当面の継続は必要だとの認識を示した。古謝氏は沖縄の特殊事情の変化を見ながら全国並みの予算や制度への移行も視野に入れる必要があると主張していた。破れたとはいえ古謝氏の視点は、沖縄の自立に向け重要な視点を提起していた。国会の場で、実りのある論議を期待したい。
 一方、今回の参院選の主要な争点の一つに憲法改正が挙げられる。改憲を主張する勢力が3分の2の議席を獲得した。憲法問題は日本の針路に関わる重要な議論だ。参院選の結果は、大きな節目となるだろう。自民党は憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の新設、参院選「合区」解消、教育無償化・充実強化―の党改憲4項目をまとめている。
 緊急事態条項は、大規模災害や武力攻撃発生時などの有事の際に政府の権限を強める内容だ。私権制限を伴うため個人の権利尊重や、法によって国家権力を縛る「立憲主義」といった、憲法の理念を根本から変えることになる。国会で、数の力で押し切るのではなく熟議してもらいたい。
 ロシアによるウクライナ侵攻、米中対立が深まる中での安全保障政策の方向性も問われる。自民は北大西洋条約機構(NATO)諸国の国防予算の対国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に来年度から5年以内に防衛力強化を目指すとし、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有も明記した。
 米軍と自衛隊の軍事施設が集中する沖縄に特に影響する。国会で徹底的に議論してもらいたい。