<社説>金武町伊芸に「銃弾」 実弾演習を中止せよ


社会
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 米軍キャンプ・ハンセンに隣接する金武町伊芸区で7日、銃弾のような物が民家で発見された。

 在沖米海兵隊は流弾の関与を事実上否定した。県警による捜査に全面的に協力し、結論が出るまで実弾演習を中止すべきだ。
 そもそも、演習場が民間地と隣接するため、これまでも流弾事件が繰り返されてきた。今回、伊芸区で見つかった銃弾が流弾であれば、実効性のある再発防止策として演習場を閉鎖、撤去する必要がある。
 発見現場は米軍キャンプ・ハンセンに隣接し、訓練場から約1キロにある伊芸区の住宅。県警によると、6日午後2時~3時ごろ、家主の男性が「ガラスが割れるような音」を聞いた。同日午後10時過ぎに男性が網戸の破損と勝手口ドアのガラスがこぶし大の大きさに割れ落ちているのを確認した。翌日、ドアの下の縁に銃弾のような物が落ちているのに気づいた。
 沖縄防衛局が県や金武町などに通知した「演習通報」によると、米軍は4~10日の間、キャンプ・ハンセン内で実弾射撃を実施すると通告していた。
 海兵隊は琉球新報の取材に対し、見つかった銃弾のような物は「古く腐食していた」と回答し、直近の6~7日に銃器で発射されたという可能性を否定した。沖縄防衛局は報道発表を出し、塀や網の破損がない点や、銃弾に「さびのようなものが見てとれる」など、疑問点を強調した。県警は銃弾のような物を科学捜査研究所での鑑定に回しているが、結果は出ていない。現段階で日米が「関与外」を強調するのは不可解である。
 県によると、1974年以降の流弾事件は確認できただけでも29件に上る。負傷者が出た例もあり、民家や道路に数十発の機関銃弾が撃ち込まれたこともある。事故が起きるたびに米軍は「安全対策がなされた」として訓練を再開してきたが、再発防止は守られていない。
 米軍の公務中に発生した事件では、米軍側が第1次裁判権を持つと規定する日米地位協定が県警の捜査を阻んできた。2002年の名護市数久田や08年の金武町伊芸、17年の恩納村安富祖の流弾で、県警は被疑者不詳のまま書類送検する形で捜査を終えている。18年に数久田の農作業小屋で50口径の銃弾が見つかった件の場合、米側は原因を「人為的ミス」と位置付けた上で、流弾と同一の50口径弾を使用した訓練を再開すると沖縄防衛局に通知した。
 今年は沖縄の施政権返還(日本復帰)から50年の節目の年だ。岸田文雄首相は5月15日の式典で、沖縄県が求めている日米地位協定の改定については、式辞では触れなかった。なぜ傍観者のような態度を続けるのか。不平等な協定の抜本的見直しに取り組むことこそ主権国家としての責務である。