<社説>男女格差 日本116位 決断一つで変えられる


社会
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 スイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2022年版男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告で、日本は調査対象146カ国中116位だった。

 21年版の120位からわずかに順位を上げたものの、平等度を示す指数(1に近いほど平等)は0・656から0・650に下がった。実質的な男女平等度は後退している。特に139位の政治、121位の経済は深刻だ。
 男女平等が求められるのは、意思決定の場に多様性を保障するためだ。クオータ制導入や女性管理職登用など、現在の政党や企業でトップを占める男性の決断一つで男女格差は解消できる。これ以上、問題の先送りは許されない。
 WEF報告のうち、政治分野で日本より下位にあるのは、女性の社会参画に消極的なイスラム諸国が並ぶ。個別の指数を見ると、衆院議員の割合133位、閣僚の女性割合120位などと複数の項目で最下位に近い。
 10日投開票の参院選で、女性が過去最多の35人当選したが、当選者全体に占める割合はまだ28%にすぎない。そもそも参院選での女性候補は181人で、全体の33・2%だった。女性候補の割合が50%に達したのは共産(55・2%)、立憲民主(51%)だけだ。
 議席や候補者の一定数を女性に割り当てるクオータ制や男女同数を義務化するバリテ法など制度によって男女平等を保障する仕組みがある。
 しかし衆院議員へのアンケートでは女性議員の84%が女性国会議員の数が「不十分」と考えているのに対し、男性議員は56%にとどまった。
 衆参両院で直ちに男女同数を確保する枠組みづくりを議論すべきである。自治体も同様だ。首長、議会の多数を占める男性が率先して男女同数に近づける条例などを検討する必要がある。
 経済分野では管理職の女性割合130位、同一労働の賃金格差76位などが目立つ。3月に世界銀行が公表した男女格差調査でも、日本は職場での待遇や給与の格差が大きく190カ国・地域中、103位タイとなっている。
 2020年までに社会のあらゆる分野で指導的地位にある女性の割合を30%にするという政府目標「202030」は実現できず、30年に実現を目指す「203030」に先送りされた。経団連も新成長戦略で「女性役員比率30%」を宣言している。
 だが「202030」が達成できなかったのは、努力目標に過ぎず、制度的な裏付けがなかったからだ。女性活躍推進法で企業に義務付けられた行動計画の進捗(しんちょく)を常に点検し、女性の登用を促進する仕組みが求められている。
 今、日本に問われているのは、性別に関係なく能力を発揮できる社会の在り方であろう。政治や経済に限らず、偏見や差別がなく、多様性を発揮できる社会の実現を男女平等の観点から共に考えたい。