<社説>嘉手納・格納庫整備 建設計画を撤回せよ


社会
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 在沖米空軍は嘉手納基地内の元駐機場「パパループ」での防錆(ぼうせい)整備格納庫建設を計画している。米国防総省が2023米会計年度(22年10月~23年9月)予算案に、同施設整備費約7700万ドル(約107億円)を計上していたことが分かった。

 米軍はパパループを、第353特殊作戦群区域の拡張工事が完了するまでの「一時的な駐機場」として使用してきた。民間地と隣り合い生活地域との近さから、一時使用に対しても嘉手納町などは反発してきた。防錆整備格納庫の建設は使用の固定化につながる。計画の撤回を強く求める。
 嘉手納町によると、米軍は航空機のさびを除去するための施設と塗装用の施設の2棟を建設する。いずれも高さ30メートル。嘉手納基地滑走路の北側には既存の防錆整備格納庫があるが、E3早期警戒機など大型機に対応できないため、規模を拡大してパパループに移設するという。既存施設のある場所での建て替えは高さ制限に抵触するため不可能という。
 かつてパパループ地区の東側に旧海軍駐機場があった。この駐機場は1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で移転が合意されたが、2017年1月、基地内の別の場所へと移転されるまで、約20年の歳月がかかった。その間、哨戒機P3やP8などが主に使用し、昼夜問わずに鳴り響くエンジン調整音や悪臭などの被害が住民生活を苦しめてきた。
 パパループに防錆整備格納庫が完成すると長期間にわたって住民生活に影響が出ることは必至だ。住宅地に近い場所を建設場所に選んだ米軍の姿勢は、住民生活の軽視以外の何ものでもない。
 嘉手納町議会は19日、建設計画の即時撤回を求める意見書と決議を全会一致で可決した。建設される施設について「危険性や環境悪化の恐れがある工場に類する施設と推察される」と近隣への影響を指摘し、住民居住地域に大規模施設が整備されることで「町民への基地被害の増大が予想される」とした。
 環境悪化を懸念するのには理由がある。嘉手納町民は騒音や悪臭、夜間・深夜飛行による基地被害にさらされてきた。人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)の、米軍基地周辺での残留実態調査(21年度冬季)によると、最も高かったのは嘉手納町の民家井戸の1900ナノグラムで、暫定指針値の38倍だった。かつて、嘉手納基地からジェット燃料が流出し井戸が燃える汚染が発生したこともある。
 今年は沖縄の施政権返還(日本復帰)から50年。米国統治時代、県民は日本に復帰して平和憲法の下に返ることを強く求めた。しかし、いまだに憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」は実現していない。日本政府は嘉手納町民の切実な思いに応え、計画の撤回を米軍に要求すべきだ。