<社説>辺野古係争委意見聴取 事実と法に基づき判断を


社会
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 名護市辺野古の新基地建設の設計変更を巡り、県の不承認処分に対して国土交通相が承認するよう是正を指示したことについて、国地方係争処理委員会(係争委)が県、国から意見聴取を行った。玉城デニー知事名の意見陳述は、事実と法律に基づき明快で説得力があった。係争委が公正・中立な判断をすることを期待する。

 知事が不承認としたのは、大規模な地盤改良工事が必要となったためだ。時系列を確認したい。
 政府の埋め立て申請は2013年3月で、12月に仲井真弘多知事が承認した。翌年、ボーリング調査が始まり、15年4月に業者から軟弱地盤があると報告された。16年3月に報告書に記載されたが公表されず、一方で軟弱地盤の存在が伏せられたまま、翁長雄志知事が15年10月に埋め立て承認を取り消し、訴訟となる。曲折を経て国が起こした「不作為の違法確認訴訟」で16年12月に県敗訴が確定した。17年4月に護岸工事が、18年12月に土砂投入が始まった。
 市民の情報公開請求によって報告書の軟弱地盤記載が明らかになったのは18年3月。政府が公式に認めたのは、土砂投入が始まった後、19年1月の安倍晋三首相の国会答弁だった。軟弱地盤の存在を伏せて既成事実を積み上げてきた政府の手口は明らかだ。
 今回の意見陳述では、公有水面埋立法の変更申請は、想定しない事態が起こった場合の事業者への救済措置であるとする。ところが、工期も費用も3倍以上という「承認出願の内容とはおよそ別物の工事」であり、県との協議も遅く「承認時から軟弱地盤の可能性を認識していたと考えない限り説明がつかない」と述べ「正当の事由」とは認められなかったと断じた。
 さらに、13年の仲井真知事の承認を「5年以内に工事を完成させ、普天間飛行場の危険性の除去について早期かつ確実な解決を行う」ものだったと説明。「大規模な地盤改良が必要であり、新基地は2030年以降にしか完成しないという正しい内容で出願していれば、承認できたはずがない」と強調し、承認を得るために軟弱地盤の可能性に目をつむった国を批判した。
 昨年11月の不承認に対して、国交相は行政不服審査法に基づく「裁決」と、地方自治法に基づく「是正指示」を同時に行い、いずれも県は係争委に審査を申し出た。「裁決」の方は法律上の審査対象に当たらないとして門前払いされ、県は提訴するかどうか検討中だ。「是正指示」の方は実質審査され、今回の意見聴取はその一環だ。
 指示取り消しか、県と国に協議を求める勧告が出れば、県の勝利だ。埋め立てた国有地に基地を建設すれば、未来永劫(えいごう)、基地となり、沖縄の過重負担・格差も固定される。沖縄の運命を左右する問題であり、係争委には、あらためて厳正・中立な判断を求めたい。