<社説>自民党と旧統一教会 直ちに臨時国会召集を


社会
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 第2次岸田改造内閣の政務三役人事を巡って、反社会的とされる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の根深い関係が次々と明らかになっている。

 岸田文雄首相はあくまで「政治家としての責任」と個人の対応に任せている。問題に正面から向き合おうとせず責任と自覚が感じられない。教団との関係を清算しないと国民は納得しない。国会の閉会中審査ではなく、10月にも検討される臨時国会を直ちに召集し、この問題を徹底的に解明すべきだ。
 首相は10日の内閣改造で、教団との関係が判明した安倍晋三元首相の実弟・岸信夫前防衛相ら7閣僚を交代させた。だが15日時点で改造内閣で教団と接点が判明した政務三役は閣僚8人、副大臣と政務官が22人、合計30人となった。「統一教会隠し」と批判された改造は、教団と関係のない議員で内閣を構成することが難しいほど深刻な事態であることを浮き彫りにした。
 旧統一教会は、マインド・コントロールによって信者を獲得する手法自体が詐欺的と指摘されてきた。さらに経済面では、つぼや印鑑などを高額で売りつける霊感商法によって多くの被害者を出した。
 反社会的と指摘される教団が政治家と結びつくことは、団体の社会的信用を高め、影響力拡大に利用されると指摘されてきた。公安調査庁も「特異集団」として「危機感や不安感をあおって勢力拡大を図っている」と指摘している。教団と関わった閣僚が「認識を欠いた」と釈明して済まされる問題ではない。
 1968年につくられた教団の政治団体「国際勝共連合」は反共産主義を掲げ、安倍元首相の祖父・岸信介元首相も賛同した。こうした経緯から、政権党の自民を中心に議員と教団の関係が脈々とつながってきたとされる。
 首相は「旧統一教会の政策が不当に自民党の政策に影響を与えたと認識していない」と強調した。果たしてそうだろうか。
 1997年に教団から名称変更の相談を受けた当時文化庁の担当課長だった元文科事務次官の前川喜平氏は、霊感商法で悪化したイメージを拭うための「正体隠し」だと考え、認めなかった。15年に一転、名称変更した。当時ナンバー2の文科審議官だった前川氏は認証前に担当課長から報告を受け、反対。「文科審議官の反対を覆したということは大臣級が認めたとしか考えられない」と指摘する。当時の文部科学相は下村博文氏。
 下村氏の選挙区支部は教団と関係が深いとされる世界日報社から寄付を受けている。政治家の影響力で行政の方針を曲げたのであればゆゆしき事態だ。下村氏には説明責任がある。
 立憲民主党は他の野党の賛同を得て憲法53条に基づく臨時国会召集の要求書を18日に提出する。すみやかに国会で議論すべきだ。