<社説>県知事選公開討論会 沖縄の未来守るのは誰か


社会
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 9月11日投開票の県知事選は今月25日の告示まで1週間となった。現職の玉城デニー氏(62)、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)、前衆院議員の下地幹郎氏(61)の主要な立候補予定者の政策が出そろい、論戦が本格化してきた。

 琉球新報と沖縄テレビ放送、ラジオ沖縄は立候補予定者3氏を招いた公開討論会を17日に開催し、争点を浮き彫りにした。基地問題以外で3者の議論から見えてきたキーワードが「守る」だろう。コロナ禍や物価高、国際情勢の不安定化という先行きへの不安が覆う中で、県民の利益や安全を背負って立つ決意と実行力が問われる選挙になる。
 県民の命と生活を守ることに直結する新型コロナウイルス感染症への対策では、玉城県政が講じてきた取り組みへの評価が焦点となる。
 玉城氏は「誰でも無料でPCR検査を受けられる体制をつくり、検査実績は全国4位の水準に拡大した」と述べるなど、自身が陣頭指揮を執る県のコロナ施策を説明した。
 佐喜真氏は都道府県別で最低の沖縄のワクチン接種率などを批判し、「政府や企業と協力体制をとりモデル地区指定を受ける。市町村と連携し接種率を上げる」と訴えた。
 下地氏は人口比や感染率に対し沖縄への国の交付金額が低いことを指摘し、「沖縄に予算を平等に分けていない政府も問題だが、これに怒らない県も問題だ」と主張した。
 子ども施策を公約の柱に据えることでは一致する。
 玉城氏は中学卒業までの医療費無料化、生活困窮世帯の中高生のバス・モノレール無料化など1期目の成果とさらなる拡充を訴える。佐喜真氏は「子ども特区」を導入し、政府の財政支援による給食費や保育費、子ども医療費の無償化を全県規模で実現すると打ち出す。下地氏も保育園から大学・専門学校までの教育費完全無料化をはじめ朝食の提供、奨学金制度活用、県外への遠征費補助を掲げた。
 説得力ある財源を示せるかは今後の焦点だ。加えて教育や保育の現場で欠員問題や担い手不足が深刻化している。子の成長を支える大人の働き方や処遇改善の方策も、議論を深める必要がある。
 将来世代を戦争の恐怖からも守る責務がある。討論会では有権者から「どうしたら再び地上戦が起こることを防ぐことができますか」との質問が寄せられた。台湾海峡で軍事的な緊張が増し、南西諸島が戦火に巻き込まれるかもしれないという事態の想定が切迫したものになっている。
 この問いに、玉城氏は「世界の国々と交流を深める行動と信頼を築いていく」、佐喜真氏は「平和の維持は抑止力も含めて備えをすることが重要」、下地氏は「当事者の国に沖縄県知事として物を言う外交をする」と答えた。
 この他にも多くの論点がある。沖縄の将来に責任ある1票を投じるため、さらなる論戦を盛り上げたい。