<社説>概算要求減額 沖縄振興の原点に戻れ


社会
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 内閣府は2023年度の概算要求で沖縄関係予算を2798億円とする。22年度概算要求額から200億円もの減額となる。

 このうち、沖縄側の自由度の高い一括交付金は前年度概算要求比で、219億円の大幅な減となる。一方で、県を通さずに国が市町村などに直接交付する沖縄振興特定事業推進費の減額幅は小さい。
 国直轄分の割合が増し、普天間飛行場移設問題で対立する県政への冷遇が見て取れる。
 国の一般会計の総額は本年度まで10年連続で過去最高を更新し続けている。23年度の防衛費の概算要求額が過去最大となることとも対照的な予算組みだ。
 22年度からの国の沖縄振興基本方針は、県民所得の低さや子どもの貧困などをなお解消されない課題として、今後10年間の沖縄振興の方向性を定めた。初年度の22年度予算に続く減額要求は基本方針と逆行している。
 県の裁量を減らす一方で、防衛費の増強によって沖縄の負担が増すことは目に見えている。承服しがたい。
 沖縄関係予算は、基地問題に対する県政のスタンスによって政権の意向が反映されてきた。その議論の基となる内閣府の概算だが、沖縄振興を担務する省庁の熱意が感じられない。国直轄の特定事業推進費は19年度に30億円でスタート。増額が続き、21年度は85億円が措置された。23年度は75億円と減額されたが、当初規模や一括交付金の減額幅を考えると沖縄側の裁量は狭まっている。
 長引くコロナ禍で、政府予算の歳出がかさむ。一定の財政規律は必要だろう。ただ、観光が基幹産業である沖縄はコロナ関連で多大な影響を受けている。玉城デニー知事は概算要求額の3200億円規模と一括交付金の増額を求めていたが、実現は難しい。
 「アメとムチ」の性質を色濃く残す沖縄関係予算は一括計上方式の問題点も浮き彫りとなっている。
 一方の防衛費だ。判明した23年度の概算要求額は5兆5947億円で、過去最大だった21年度を上回る。さらには、金額が示されない「事項要求」が多数あり、最終的には6兆円台半ばとなる見通しだ。
 現行でさえ、対中戦力では主力たり得ない陸上自衛隊の人員、予算の無駄が指摘されている。財源も定かではない大幅増額の前に、組織の在り方や効率を点検すべきだ。
 その増額で想定するのは南西諸島での実戦だという。戦闘継続能力の向上を打ち出し、弾薬の保管場所としても沖縄が想定される。基地負担がさらに増し、これに伴って沖縄が標的となるようなことは断じて認めることはできない。
 本年度からの政府の沖縄振興基本方針は、アジア諸国に隣接する沖縄の優位性を生かした振興をうたった。沖縄の自立を掲げた沖縄振興の原点を国も県も見つめ直す必要がある。