<社説>県知事選きょう告示 政策語り判断材料示して


社会
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 沖縄県知事選は25日に告示され、17日間の選挙戦が幕を開ける。

 県内各地で選挙が相次ぐ「選挙イヤー」の中でも、知事選は最大の政治決戦に位置付けられる。沖縄の日本復帰から50年という節目の年でもあり、沖縄の針路が問われる大事な選挙だ。誰が県政トップにふさわしいかを見極められるよう、各候補者は政策を訴え、多くの判断材料を県民に示してほしい。
 選挙戦は、現職の玉城デニー氏(62)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)=自民、公明推薦、前衆院議員の下地幹郎氏(61)の3氏が、激しい前哨戦を展開してきた。
 県政の最重要課題である基地問題では、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設を巡り三者三様の主張をしている。
 玉城氏は、県政の継続による新基地建設阻止を掲げる。軟弱地盤によって完成時期が見通せない辺野古移設では普天間周辺の危険性が放置されるとし、新たな方策を日米沖で協議するため県との対話を政府に求めていくとする。
 佐喜真氏は、県政の転換による政府との対立解消を訴える。普天間周辺の危険性除去を図る現実的策として辺野古移設を容認する立場を明確にした上で、訓練移転や工期短縮を政府と交渉して普天間返還の前倒しを図るとする。
 下地氏は、鹿児島県馬毛島への訓練移転によって普天間代替施設の規模を縮小し、大浦湾側は埋め立てず、移設を既存の埋め立て区域にとどめるという対案を示す。訓練移転後は同飛行場の軍民共用化で産業振興を図るとする。
 多くの米軍基地を抱え、自衛隊配備も強化される沖縄は、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾海峡を巡る米中の対立激化といった緊迫する国際情勢が直接に影響する。安全保障や外交に対する候補者のスタンスをしっかり吟味することも重要になる。
 経済政策も有権者の関心事だ。コロナ禍や物価高騰で疲弊する産業、県民生活を立て直す道筋を示すことが求められる。全国平均2倍の「子どもの貧困」対策や教育に力を入れることでは3氏が共通する。必要な財源の裏付けも含め、活発に政策論議を交わすことだ。次代への責任を真剣に語ることは、政治に無関心と言われる若年層が投票所に足を運ぶことにつながる。
 米国の施政下にあった沖縄では1968年に初の主席選挙が実施されるまで、全住民の代表を直接選ぶ権利が認められなかった。県知事選は日本に復帰した72年以降、今回で14回目となる。沖縄ほど一票を投じる重さを知っている地域はない。
 投票日は9月11日だ。25市町村で議会議員選挙や首長選が実施される統一地方選の集中日と重なる。地域の将来を見据え、主権者の意思を示す大切な機会となる。