<社説>ウクライナ侵攻半年 一日も早い停戦実現を


社会
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 ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過した。ウクライナ軍は22日、戦死者が約9千人に上ると公表。ロシア軍の損失も数万人規模に達するとの観測もある。戦闘長期化で、双方の人的被害は拡大している。

 住民を巻き込んだ地上戦で沖縄県民の4人に1人が犠牲になった。ウクライナでも同様の事態が繰り返されている。ウクライナ住民の命を救うため、国際社会は一日も早く停戦を目指すべきだ。
 ロシアは2月の侵攻開始直後、首都キーウ(キエフ)制圧に失敗し、東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)に戦力を集中。マリウポリやセベロドネツクといった都市を徹底破壊し、ロシア軍が撤退したキーウ近郊ブチャなどでは市民多数の虐殺が判明した。
 ウクライナは6月以降、米国の高機動ロケット砲システム「ハイマース」などの供与を受け、ロシアの武器庫や指揮所、補給線を攻撃した。初期に制圧された南部ヘルソン州などで反攻に出ている。攻防は2014年にロシアが強制編入した南部クリミア半島に波及しつつあり、紛争長期化は必至の情勢だという。
 紛争が長期化する中で、多くの子どもが犠牲になっている。国連児童基金(ユニセフ)は22日、ロシアの侵攻以降、ウクライナで少なくとも972人の子どもが死傷したと発表した。国連が独自に確認できた数で、実際の被害はさらに多いとみている。子どもたちの犠牲をこれ以上、増やしてはならない。
 もう一つの懸念材料は原発への攻撃だ。ロシアは3月4日にザポロジエ原発を攻撃して世界を震撼(しんかん)させた。原子炉1基が緊急停止する事態もあり、チェルノブイリ事故を上回る大惨事がいつ起きてもおかしくない異常事態だ。
 核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書の素案に、ロシアに撤退を求め「ウクライナ当局による管理復活」が盛り込まれた。ロシアのプーチン大統領は国際原子力機関(IAEA)の調査団受け入れの意向を示したものの、実現は不透明だ。早急に立ち入り調査のルートについて合意し、原発の状況を把握する必要がある。さらに周辺を非武装地帯にする方策を見いだしてもらいたい。
 一方、ウクライナ侵攻を契機に、台湾有事を持ち出し、国内で防衛力強化の流れが加速している。防衛省の23年度概算要求額は5兆5947億円で、過去最大だった21年度を上回る。さらに、金額が示されない「事項要求」が多数あり、最終的には6兆円台半ばとなる見通しだ。
 防衛費の増強は台湾有事への対応も想定されているとみられ、台湾に隣接する沖縄が紛争に巻き込まれる可能性が高まる。77年前、沖縄は戦場となった。隣国との摩擦を増やせば、同じ過ちを繰り返すことを肝に銘じなければならない。