<社説>国葬・旧統一教会問題 首相説明は中途半端だ


社会
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 低姿勢だったが中途半端な説明に終始し、国民の理解が得られたとは到底言えない。

 岸田文雄首相は8月31日の記者会見で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の関係を断つと明言した。
 旧統一教会との関係について首相は「党として実態を明らかにして関係を断ち、信頼回復につなげたい」と述べた。だが、半世紀にわたる関係をどのようにして清算するのか明らかにしなかった。
 安倍晋三元首相の国葬の理由として、海外要人に応対する外交儀礼を前面に出した。要人対応なら憲法や法律にも明確に定められていない国葬を行ってもいいのだろうか。
 旧統一教会問題について自民党は当初、深刻に受け止めず対応が後手に回った。
 首相は当初、個人の問題という認識を示していた。茂木〓充幹事長も8月10日の会見で、所属国会議員に対し、党が個別に調査する考えはないとの立場を崩さなかった。
 その後、安倍氏側近の萩生田光一政調会長と教団側の付き合いが報じられ、内閣改造後の政務三役計30人超に接点が判明した。報道各社の世論調査で内閣支持率の下落傾向が顕著となっていた。国民や野党の批判を受け、方針転換を余儀なくされた。
 今回の自民党の調査は、教団側の会合への出席、祝電の送付、寄付やパーティー収入、選挙支援の有無などについて回答を求めている。自己申告で果たして全容を解明できるのか。第三者機関を通じて調査すべきだ。対象を自治体議員にも広げる必要がある。安倍氏側への調査について首相は慎重姿勢を見せたが、全容解明には不可欠だ。教会の名称変更の経緯や政策決定過程への影響も不明だ。
 一方、国葬の理由について首相は、安倍氏が憲政史上最長の在任期間であることを挙げている。安倍氏の政治的評価が分かれている中で、最長の在任期間は理由にならないだろう。内閣から独立した第三者機関に諮った上で、国会で決めればいいではないか。
 当初から法的根拠がないことが指摘されてきた。国民の意見が二分する問題を国会の議論を経ずに内閣の一存で決めることが許されるのか。
 首相は会見で従来の実施理由に加え、多数参列する海外要人に「日本国として礼節を持って応える」と儀礼上の必要性を挙げた。これまでも内閣・自民党合同葬に多数の海外要人が参列した。国葬でなければならない理由にはならない。
 政府によると、今回の国葬とは「故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式」としている。首相は、国民に弔意を強制するものではないとも述べた。そうであるなら、国葬にこだわることはないだろう。
 国葬の費用として予備費から2億5千万円を支出する。だが警備費や接遇費は含まれていない。首相は総額を明らかにしなかった。何のための記者会見か理解できない。
※注:〓は敏のなかれは「母」