<社説>県知事選・経済 ザル経済の脱却今こそ


社会
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 11日投開票の県知事選は告示から1週間が経過し、選挙戦は後半戦に突入した。沖縄の構造的な課題である「ザル経済」からいかに脱却するか。沖縄の日本復帰50年の節目に迎える県知事選の重要な論点である。

 新型コロナウイルス感染拡大で景気・雇用が落ち込み、急速な円安や物価高騰を受けて企業収益や家計が厳しさを増す中、経済問題は有権者の大きな関心事となっている。
 自立型経済の構築を目標とする沖縄振興体制についても、半世紀の総括が問われる。沖縄振興を50年続けながら1人当たり県民所得はいまだ全国最下位、子どもの貧困率は全国の2倍に上る。
 沖縄は戦後27年の米支配で地場産業が十分に育成されてこなかった歴史があり、現状でも農業や製造業の生産力が弱いままだ。このため経済活動や県民生活に必要な物資の調達をほとんど外部に依存し、ザルから水が漏れるように資金が県外に流出してしまう。県内で売り上げが発生しても、地元企業の利益や県民の所得につながる歩留まりが低くなっている。
 その克服には競争力を持った付加価値の高い人材、企業の育成が不可欠だ。沖縄で生じる需要を県内企業がしっかりと取り込み、生み出した利益を人や設備に投資して次の成長につなげる。経済の好循環に向けた仕組みづくりや危機に強い産業構造を導く役割が、県知事に求められる。
 知事選に立候補した3氏ともコロナ禍からの経済再生を掲げ、県民所得の向上を公約に盛り込むことで一致する。一方で、経済を活性化させる手法に違いが見られる。
 下地幹郎氏は、土地用途の見直しや開発許可の審査期間縮小など大胆な規制緩和で開発と投資を促進し、税収・雇用の拡大を図ると強調する。社会資本整備に民間資金を活用するPFI方式の導入、県内企業最優先など積極的な民間活用を公約に掲げる。
 佐喜真淳氏は、コロナ禍の影響が深刻な観光関連産業を中心に1千億円規模の支援を公約するほか、沖縄関係予算の3500億円以上への引き上げにも言及する。脱炭素化、エコビジネス、健康医療の分野で、官民連携により新産業を創出すると打ち出す。
 玉城デニー氏は、首里城焼失や豚熱など多くの困難に直面したが、既にコロナの収束後を見据え、沖縄観光の再生や企業の「稼ぐ力」を強化する取り組みを進めてきたと強調。沖縄のソフトパワーの活用やSDGsの推進による戦略的な産業振興を掲げる。
 国に頼らず県自ら独自の制度を立案・実施するなど裁量拡大を重視する主張や、国家戦略のモデル地域に沖縄を位置付けることで予算の重点化を狙う考え方など、国と地方の関係を巡る候補者間の立ち位置も見えてくる。
 どの方向性を志向するか有権者の選択が問われる。各候補の訴えに耳を傾けたい。