<社説>県知事選・基地 抜本的な基地負担軽減を


社会
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 11日に投開票される県知事選は、基地問題が再び大きな争点だ。有権者にとって誰に投票するか、主な判断材料の一つとなる。それだけに、立候補者には残る選挙戦で政策論争の徹底を望む。

 中でも、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に対する政策は争点の柱だ。日米地位協定の改定や有機フッ素化合物(PFAS)による水汚染問題、沖縄への自衛隊強化などの課題にも考えを示してほしい。
 沖縄が日本に復帰して今年で50年になったが、広大な基地の存在は変わらず、新たな基地さえ建設されようとしている。基地があれば標的にされる恐れがある。沖縄を再び戦場にしてはならない。立候補者は、基地絡みの事件事故や騒音など日常の問題の解決策だけではなく基地負担の抜本的軽減の実現に向けたビジョンを明示すべきだ。
 普天間飛行場の辺野古移設を巡っては、埋め立て海域に軟弱地盤が見つかり完成のめどが立たないにもかかわらず、政府は2018年12月に埋め立て土砂を投入した。防衛省の試算では地盤改良工事がうまくいっても新基地完成には12年を要する。予算は約9300億円を見積もる。完成の見通しが立たない工事に膨大な予算と年月を費やすことへの可否が問われている。
 この問題への立候補3者の立場は違いが鮮明だ。
 前衆院議員の下地幹郎氏は「軟弱地盤は埋め立てさせない」と訴える。訓練を鹿児島県の馬毛島に移すことで普天間所属のオスプレイなどは既に埋め立てられた区域に収め、普天間周辺の危険性を除去する政策だ。跡地は軍民共用の国際空港にするという。
 前宜野湾市長の佐喜真淳氏は「原点は普天間の危険性除去だ」と強調し、政府が進める辺野古移設を容認する立場だ。普天間飛行場の返還を2030年までに実現することを掲げ、早期返還の実現へあらゆる方策を政府と協議すると説明している。
 現職の玉城デニー氏は、政府が進める移設計画では新たな機能が加わるとし「辺野古新基地建設反対を貫く」と公約している。建設に12年以上かかる辺野古新基地では普天間飛行場の早期の危険除去につながらないとし、県外・国外移設を求めている。
 辺野古沖合埋め立てには、沖縄戦の激戦地だった本島南部の土砂を使用する計画がある。3候補者は、その是非への態度も明確にすべきだ。
 日米地位協定の改定や見直し、沖縄への自衛隊配備強化についても3者の考え方には違いがみられる。各候補者は有権者に自身の見解を分かりやすく示し続けてほしい。
 沖縄県知事選は今回も県内外、国外からも注目されている。基地問題を巡る国との対決の行方を決める選択でもあるからだ。沖縄にとって基地問題は未来を左右する重要な問題だ。有権者はその重い1票を投じてほしい。