<社説>県知事選・子どもの貧困 教育に集中的な支援必要


社会
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 11日投開票の県知事選は、残り1週間を切った。3候補の政策論争が熱を帯びる。基地問題、経済とともに各候補が同じように重視するのが「子どもの貧困対策」だ。

 短期的には直面する課題を解決する手段が求められる。長期的には子の世代へ貧困を連鎖させない仕組みが必要である。県民が求めるのは教育費への集中的な支援である。3氏には、従来にない発想で貧困を断ち切る施策を展開してもらいたい。
 県内での子どもの貧困率は全国の2倍に上る。県が実施した2021年度沖縄子ども調査報告によると、最も所得が低く困窮世帯とされる層の割合が前回調査(18年度)に比べて初めて悪化した。
 現在の暮らしぶりを「苦しい」「大変苦しい」と答えたのは困窮世帯の半数以上に上っている。困窮世帯に限らず調査で多くの保護者が挙げたのが義務教育段階での支出の多さだ。学用品、子どもを預ける学童など節約できない面での支出が家計を圧迫する。
 中学・高校は制服やバスなどの通学費用なども加わる。家計を支える施策が必要だ。
 下地幹朗氏は子どもの居場所づくりや母子支援施設の増設、財政支援の拡充に取り組むとしている。
 佐喜真淳氏は目玉政策とする「子ども特区」導入による給食費や保育費、医療費の無償化実現などを提示する。
 玉城デニー氏も学校給食や医療費の無償化などのほか、児童相談所の増設や特別支援学校の新設を挙げている。
 いずれも待ったなしの対策で、速やかに実行することを期待する。資源の乏しい沖縄で、未来へ希望を託せるのは人材である。本年度から始まった第6次沖縄振興計画で重視する「ソフトパワー」の育成にもつながる。教育を含めた子ども予算を倍増するなど大胆な発想を新知事に求める。
 同時に長期的な視野での貧困対策も重要だ。
 下地氏は制限なく全ての人に一定額を支給する沖縄版ベーシックインカム制度導入、佐喜真氏は自立支援やライフステージに応じた就労支援の強化、玉城氏は県内企業の雇用機会拡大や賃金上昇を支援する考えを示している。
 子どもの貧困は親の貧困でもあるといわれる。経済的な事情により、子どもから進学や就学の機会が奪われることがあってはならない。
 そのためにも子育て世代が安心できる就労環境を整備しなければならない。非正規から正規雇用への転換、全国最下位とされる県民所得の向上など構造的な課題にも切り込む施策が求められる。
 名桜大の宮平栄治教授は低所得層の解決へ向け、成長産業に必要な労働者の学び直し推進を提言している。親にも子にも必要なのは貧困から脱却するための教育費だ。
 貧困のない県民生活実現のために、どの候補の施策が有効なのか。投票行動を通じて県民の意思を示そう。