<社説>県知事選・多様性 リーダーシップが必要だ


社会
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 性や家族の在り方の多様性を認めるかどうか、ジェンダー平等、差別をなくす法律への賛否などが選挙で問われる時代になっている。5日後に投開票日を迎える沖縄県知事選挙でも争点になる。候補者は、有権者の選択肢となるよう、自らの姿勢や政策を明確にしてほしい。

 琉球新報は各候補に20項目の政策アンケートを実施し、選挙アプリで公開している。その中の三つの質問で多様性に関する姿勢を尋ねている。
 同性カップルを婚姻に相当する関係と認めるパートナーシップ条例制定について、下地幹郎氏、佐喜真淳氏ともに「中立」とし、玉城デニー氏は「賛成」と答えた。玉城氏が「相続権や税金の配偶者控除などの権利が認められていないなどさまざまな不利益を被っている」としたのに対し、下地氏は「議論を深めていく必要がある」、佐喜真氏は「県民世論の動向を注視しながら検討を進めるべきであると考える」と慎重姿勢だ。
 民法改正が必要な選択的夫婦別姓導入については、下地氏、玉城氏が「賛成」なのに対し、佐喜真氏は「中立」で「導入した場合にどのようなことが想定されるのか、憲法解釈や国際的な動向を含め、さらなる国民的議論を深めるべきと考えている」とした。
 差別的言動を規制するヘイトスピーチ条例の罰則については下地氏「中立」、佐喜真氏「やや反対」、玉城氏「やや賛成」と分かれた。現職の立場にある玉城氏は「沖縄県は年度内の条例制定を目指しており、どのような法的拘束力を持たせるかを含め、他県の先例や専門家の意見を踏まえ検討を進める」と答えた。
 下地氏は「罰則が必要であるのか、罰則の基準等々、まだまだ議論を深めていく必要がある」と説明。佐喜真氏は「規制条例は制定すべきである」としつつも「他方、表現の自由との衝突調整も考慮すべきであり、現状に鑑みると罰則まで規定する必要はないのではないか」としている。
 玉城氏は前回選挙から「誰一人取り残さない社会」を掲げ、性の多様性を尊重しLGBTQの人への偏見解消を目指す「美ら島にじいろ宣言」を発表した実績を踏まえて積極姿勢を見せる。一方、佐喜真氏は推薦を受ける自民党内に反対意見が強いためか、慎重さが目立つ。いずれも深刻な人権問題であり、知事のリーダーシップが求められる。
 さらに、意思決定の場の多様性を保障するジェンダー・ギャップの改善も重要だ。女性管理職の登用は沖縄県も不十分で、部署によって登用率が大きく異なるアンバランスもある。県知事が旗を振って県の中で改善していけば、市町村や民間、地方議会の議員数にも波及していくはずだ。各候補はジェンダー・ギャップ解消策も示してほしい。
 新知事には、県独自の取り組みとともに、法改正などを要するものは政府や国会に働き掛けることが求められる。