<社説>入管死に賠償命令 入管行政の抜本見直しを

 入管施設で死亡したカメルーン人男性を巡る訴訟の判決で、水戸地裁は国に賠償を命じた。入管職員が救急車を呼ばなかった注意義務違反を認定した。国の責任を認めた判決は初めてとみられる。

 問題の根底には外国人の長期収容など入管行政の不備がある。国は判決を重く受け止め、入管行政を抜本的に見直すべきだ。
 判決によると、男性は入国を拒否され2013年に東日本入管に収容された。糖尿病などを患っており、14年に監視カメラのある休養室へ移された。男性は「アイムダイイング(死にそうだ)」などとうめき声を上げたり、胸の痛みを訴えたりして立てなくなったが、職員は床に寝かせたままにした。その後、心肺停止状態になっているのを職員が発見、病院に救急搬送したが死亡が確認された。
 判決は苦しんでいた男性の状態を「尋常でない状態だった」と指摘した。重篤な病状にあった可能性があるものとして医療機関に救急搬送するべきで、心肺停止状態で見つかるまで搬送しなかった入管の対応に過失があるとした。
 非人道的な対応が繰り返されている。昨年、退去強制命令を受け収容中の30代のスリランカ人女性が体調不良を訴えた際も、職員は救急車を呼ばず女性は死亡した。
 全国の入管施設で07年以降、17人が病気や自殺で亡くなっている。相次ぐ死亡は、構造上の問題がある。
 在留資格のない人などを原則すべて強制送還まで収容する「全件収容主義」という入管の方針がある。収容施設は本来、本国への送還まで過ごす「一時的」な場所だが、収容の長期化が問題になっている。スリランカ人女性の収容は半年を超え長期化していた。収容者の処遇には職員に広い裁量が認められて、行きすぎた裁量の行使も問題だ。
 昨年の通常国会に入管難民法の改正案が提出された。政府は、不法残留などの理由で退去処分となった外国人が入管施設で長期収容される状態を解消すると説明した。さらに送還を拒む者を減らす狙いがある。
 改正案は、全員収容の原則を維持しているので根本的な解決にならない。司法の判断を経ずに収容が決まる手続きのやり方も見直さず、収容期間の上限もない。迫害を受ける可能性のある国へ難民を強制送還することにつながりかねない。
 しかし、収容中のスリランカ人女性の死亡で、世論の批判が集中し、政府・与党は成立を断念した。法務省は、改正案を一部見直し来年の通常国会への提出を目指しているという。
 日本は国際人権規約を批准している。しかし、改正案は、複数の国連機関や国際人権団体から人権上問題があり条約違反を指摘された。国際人権基準に達していない法案が再提出されても認めるわけにはいかない。



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