<社説>マイナ普及へ強硬策 自治体の締め付けやめよ

 政府は申請が低迷するマイナンバーカードの普及のため、カードの取得率が低い自治体に特定の交付金を配分しないことを検討しているという。カードを取得するかどうかは個人の自由であり、義務ではない。任意にもかかわらず、自治体にペナルティーを科すことは取得を強制することであり、言語道断だ。

 カードの取得申請が進まないのは、多くの国民にとって取得の必要性が感じられないことが最大の要因だ。加えて個人情報の安全性への不安や監視社会化への懸念など、マイナンバーシステムに対する根強い抵抗感がある。
 いずれも政府の信頼性や説明責任に関わる問題だ。その責任を自治体に転嫁するやり方はやめるべきだ。
 政府は2022年度末までに、ほぼ全国民カード取得という目標を掲げているが、8月末時点の取得率は47・4%と低迷している。
 国がマイナンバーカードを導入する理由として、行政の事務効率化や正確な所得把握で適正課税につなげることなどがある。国や行政側のメリットの一方で、カード取得を呼び掛けられる住民側の用途は乏しい。政府は、キャッシュレス決済で使えるポイントを最大2万円分付与することを申請の呼び水としてきたが、それでも希望者が想定を下回り、9月末までの期限を延長することとなった。
 申請が低調な中で政府が検討するのが、23年度に創設する「デジタル田園都市国家構想交付金」との関連付けだ。カードの取得率が全国平均以上でないと自治体が受給を申請できなかったり、配分額に差を付けたりするという。
 取得率向上の努力を自治体に押し付ける手段として交付金を使うのは筋違いも甚だしい。しかも政府の検討はこれだけではない。総務省も6月に、23年度の地方交付税について自治体ごとのカード取得率に応じて配分額に差を付ける方針を表明している。
 地方交付税は自治体の財源不足を補う、税収の再配分機能だ。義務でもないカードの普及促進を自治体に迫る取引材料に使うのは問題が大きい。沖縄県の取得率は全国で最も低い37・9%であり、財政面での影響は必至だ。
 予算で締め付け、自治体へのしわ寄せを強める強硬策は地方自治を侵害し、国と地方の対等な関係に背く。
 政府はマイナンバーと一緒に公的給付金の受け取り用口座の登録を求めるほか、運転免許証との一体化などカードの利用拡大に前のめりだ。その分、情報漏えいや悪用の危険性は高まる。政府による個人情報の集中管理が進む一方で、自己情報コントロール権担保の議論は進んでいない。
 住民の意思と関係なく無制限に利活用が拡大していくことに注意を払わなければならない。政府は現場の自治体に圧力をかけるのではなく、マイナンバー制度の抱える課題に向き合うべきだ。



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