<社説>原子力規制委10年 独立・透明性の堅持を

 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、国の原子力規制委員会が発足してから10年を迎えた。

 岸田政権が原発の積極活用に大きくかじを切る中、事故の教訓である「規制の独立」が圧力にさらされている。規制委は発足の理念を忘れず、中立性と透明性を堅持してもらいたい。
 原発事故当時、規制を行う原子力安全・保安院は、原発を推進する資源エネルギー庁と同じ経済産業省にあった。保安院が原発を推進したい電力業界などに取り込まれたことも原発事故の一因とされた。
 そこで規制する側を経産省から切り離し、環境省に原子力規制委員会を設置した。規制委は独立性の高い「三条委員会」とした。
 規制委は、安全対策を強化した原発の新規制基準を策定した。地震や津波への備えや、炉心溶融などの過酷事故対策を大幅に強化。テロや航空機の衝突まで想定している。厳格な姿勢で原発の審査などに臨み、審査は原則公開で透明性を確保した。
 政治に左右されず、安全確保に特化した判断が、結果的に核燃料サイクル政策の中核施設である高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉に追い込んだ。テロ対策の不備が相次いで発覚した東電柏崎刈羽原発に対し、核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令も出した。こうした判断は評価できるが、福島第1原発の「処理水」海洋放出計画を認可したことは疑問である。
 一方、ここにきて規制委の独立性が揺らぐ事態が起きている。岸田文雄首相は、次世代型原発の建設を検討する方針を公表した。原発事故以降、原発の新増設やリプレース(建て替え)は想定しないとした従来のエネルギー政策の基本方針の転換となる。
 運転期間を原則40年、最大60年と定めたルールも、審査で長期停止していた期間は除外することを検討する。「可能な限り原発依存度を低減する」という事故以降の方針からの大転換だ。将来にかかわる基本政策を国会にも諮らず次々と転換させるやり方は、民主主義の手続きをないがしろにしている。
 来夏以降には、既に新規制基準の審査に合格している原発7基を追加で再稼働させることも目指す。この中には、規制委が事実上の運転禁止命令を出した東電柏崎刈羽原発も含まれる。規制委の領域への政治介入は言語道断だ。
 規制委の内部でも変化が生じている。今年、規制委の事務局である原子力規制庁のトップ3のポストを、原発を推進してきた経産省の出身者が初めて独占した。人事を通じて「三条委員会」に介入することがあってはならない。
 ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格高騰、電力逼迫(ひっぱく)を背景に、原発復権の動きが強まる。規制委は原発事故の教訓から誕生した。規制委の独立性を骨抜きにすることは許されない。



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