<社説>きょう臨時国会召集 国民が納得いく説明を


社会
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 7月の参院選後、与野党が初めて本格的な論戦に臨む臨時国会が3日召集される。安倍晋三元首相の国葬、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治との関わりなど論点は多岐にわたる。岸田文雄首相を筆頭に、政府には国民が納得できる説明を求める。

 安倍氏の国葬に対しては、各種の世論調査で反対の意見が上回る中、実施された。首相の従来の説明は、憲政史上最長の政権を担い、海外から多数の弔意が寄せられているからという理由だった。
 だが国葬が廃止された理由を再度考えるべきだ。戦前の天皇主権下で実施された国葬は、皇族以外では「国家に功績があった者」を天皇の名の下に認め、国威発揚に利用する意味も含まれていた。日露戦争で勝利に貢献した東郷平八郎や真珠湾攻撃を指揮した山本五十六が代表的な例だ。
 主権在民の現憲法下で国葬を営む根拠はなく、在任中の施策に賛否が分かれる人物であればなおさらだ。仮に法整備しても対象者は時の政権が恣意(しい)的に選び、それこそ「国威発揚」に利用されかねない。
 「終わったら反対していた人たちも、必ずよかったと思うはず」(二階俊博自民元幹事長)という感情論で片付く話ではない。国会での論戦を通じ、国民の異論に首相は正面から向き合い、同様の事態を繰り返さないでもらいたい。
 旧統一教会問題では三権の長の一人である細田博之衆院議長が、関連団体の会合に出席するなどの接点を認めた。
 山際大志郎経済再生担当相は、報道によって関連団体への会合出席が明らかになっただけでなく、自民党の調査にも報告漏れがあり、次々と接点があったことが判明した。
 政府の合同電話相談で、旧統一教会関連とみられる被害は35%が10年以内に起きたことが分かった。旧統一教会の霊感商法が刑事裁判で初めて有罪認定された2009年以降も、信者らを信用させるのに、こうした政治家との関係が効果を発揮したと言われても反論できないだろう。
 選挙で応援してくれるなどの理由で、国民の財産を狙う反社会的集団と付き合ってきたのであれば政治家としての認識が甘すぎる。
 閣僚はじめ政務三役の多くが接点を持つ。政権も国会で自浄作用を発揮すべきだ。宗教法人格取り消しや被害救済など、国民の不信感を拭い去る積極的な対応を今国会で打ち出してもらいたい。
 沖縄にとっても重要な論点がある。概算要求で過去最大の防衛費だ。5月の復帰50年衆院決議は「強い沖縄経済と平和創造の拠点」をうたった。
 ところが防衛費の内訳は南西諸島防衛を理由とした実戦想定の弾薬確保などが柱となった。平和創造どころか、緊張感を高め危機を招き入れるかのような政府の方針だ。
 沖縄を再び戦火の犠牲とするのか。今国会では政府の防衛に対する考え方も県民とともに注視したい。