<社説>那覇市長選2新人対決 自治の在り方問う選挙だ


社会
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 16日告示、23日投開票の那覇市長選で一騎打ちが予想される、前県議の翁長雄治氏と前那覇市副市長の知念覚氏がそれぞれ出馬会見を行った。それぞれの政治姿勢、公約の柱が示され、相違点も明確になった。2人は9日投開票の豊見城市長選の告示日にそれぞれの勢力の出発・出陣式に駆け付けて演説し、本格的な舌戦がスタートした。

 「オール沖縄」の候補となる翁長氏は「那覇を日本一子育てができる街にする」と述べ、城間幹子市政を踏襲する考えを表明した。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について反対の立場を明確にし、争点にする考えだ。
 自民党が擁立した知念氏は「経済の活性化、市民福祉の向上に取り組む」と述べ、基地問題を巡る対立構図を避けて「市民党」のイメージを打ち出した。新基地建設への賛否は明言せず「見守る姿勢」を表明し、一方で国とのパイプの重要性を強調した。
 経済や子育て支援は双方とも掲げており、基地問題への姿勢、中央政府にどう向き合うのかが大きな相違点だ。新基地反対の民意は7月の参院選、9月の知事選でも示された。国政、県政と市政は同じではないが、那覇市長は沖縄の民意を代表する一人だ。沖縄の選挙イヤーを締めくくる重要選挙で、政府との関係、地方自治の在り方について、那覇市民がどのような選択をするのか注目したい。
 今回の市長選は、市政与党のオール沖縄陣営、野党の自民党とも、候補者選びが混迷した。県知事選挙、県議補選とも連動して異例の複雑な展開をたどってきた。
 3期目に挑むかどうかが注目されていたオール沖縄陣営の城間市長が5月2日、引退を表明して混迷が始まった。城間氏が「那覇市長選は自公対オール沖縄でなくてもいい」と発言したことが波紋を広げた。そんな中で、オール沖縄を立ち上げた故翁長雄志知事の那覇市長時代の側近で、翁長市政を引き継いだ城間市長を支えた知念氏が、両陣営で有力候補に浮上した。
 結局、県議だった翁長氏がオール沖縄として出馬を決意し、知念氏は自民党が推薦を決定し、他の立候補の動きも消え、一騎打ちの構図が固まった。翁長氏の県議辞職で知事選と県議補選が同時実施となった。知事選は両陣営とも那覇市長選とのセット戦術を目指したが、知念氏は知事選では前面に立たなかった。
 翁長雄治氏は故翁長知事の次男であり、オール沖縄を支える一人だ。城間市長は、翁長氏と知念氏のどちらを応援するのかをいまだに明らかにしておらず、波乱要因になりそうだ。
 政府とどう向き合おうとしているかも重要なポイントだが、政策や経歴、知名度、人柄などさまざまな選択肢があり得る。新人対決で、低下傾向にある投票率のアップにも期待したい。