<社説>家事・育児時間に男女差 意識や長時間労働改めよ


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 6歳未満の子どもがいる県内の共働き世帯が1日に費やす育児や家事関連時間は、妻が夫より長時間に及んでいることが国の2021年社会生活基本調査で明らかになった。その差は育児で3時間10分、家事関連で5時間10分だった。専門家は背景に社会的性差であるジェンダー差があり、子育てや家事は女性がすべきだという意識があるとみる。

 ジェンダー平等を実現するには、この意識を改めねばならない。ただ改めようにも、社会の仕組みを変えなければままならない。その一つが長時間労働だ。男性が家事・育児に、より参加できるようにするためにも働き方改革を一層進める必要がある。
 家事関連時間について妻と夫の時間差を沖縄と全国で比較すると、全国は4時間36分で沖縄よりも34分短い。沖縄の共働き世帯の妻の方が、全国より負担が大きい。最近20年でみると、男性は微増しており、差は少しずつ縮まりつつあるが依然大きい。これは全国的傾向でもある。全世代の1日の家事関連時間は、県内も全国も女性が男性より2時間半余り長い。
 新型コロナウイルスの感染拡大は女性の負担偏重に拍車を掛けた。20年の内閣府調査では、家事、育児それぞれで時間が増えたとする女性は男性の約1・5倍に上った。
 日本は海外と比べても男女差が大きい。内閣府の19年版男女共同参画白書によると、夫が育児・家事関連に費やす時間は、スウェーデンで3時間21分(妻は5時間29分)、米国は3時間10分(妻は5時間40分)、フランスは2時間半(妻は5時間49分)。いずれも妻が長いが差は小さい。
 日本で差が大きいのは意識の問題だけではなく、社会環境の影響もあるとみられる。内閣府の国際意識調査で「自国が子どもを産み育てやすい国だと思うか」と問うと、日本は「そう思う」が38・3%で「そう思わない」が61・1%だった。他国は「そう思う」がスウェーデン97・1%、フランス82・0%、ドイツ77・0%。日本は育てやすいとする割合が突出して低い。
 産み育てやすい国と思う理由を見ると、日本は治安の良さで最多だった一方、フランスやドイツは「妊娠から出産後までの医療が充実」「保育サービスが充実」が、スウェーデンは「教育費の支援や軽減」が多かった。日本は3カ国に比べ、こうした子育て支援の項目の割合が低かった。
 社会の仕組みを改めるという課題は、長時間労働の改善のほかにも、医療・保育サービスや教育費支援の充実も挙げられる。まずは若い世代への支援を厚くすることが肝要だ。これらに政治や行政、企業、社会が一丸となって取り組む必要がある。
 夫の休日の家事・育児時間が長いほど第2子出生率が高いとの調査結果もある。男性の家事・育児参加の推進は少子化対策や女性が活躍できる社会の実現にもつながる。