<社説>担任不在 小中52人 学校改革は社会の責務だ


社会
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 県内公立学校で学級担任の未配置が、9月当初時点で52人に上った。小学校は6月時点から3倍以上となる42人と異常事態だ。憲法26条は子どもに「教育を受けさせる義務」を定める。現状はその義務を社会が果たしていない。

 全国的にも教員不足が深刻化している。しわ寄せを食うのは子どもたちだ。背景には長時間労働など教員の働き方改革が進まないことがある。
 文部科学省、各教育委員会が責任をもって取り組むのは当然として、地域社会、保護者も傍観してはいられない。学校改革が社会の責務であるという認識を共有すべきだ。
 県教育委員会の調べでは、2019年11月時点で、県内の教員は50人不足だった。22年6月時点では、不足する教員は60人に増えている。
 産休・育休の見込み数が増えたこともあるが、深刻なのは病休者の増加だ。精神疾患で休職した県内の公立学校教員は20年度に188人、21年度に199人いた。休職者に占める割合は、20年度が1・21%で全国平均0・56%の2倍を超えていた。
 琉大大学教育センターの西本裕輝教授は、沖縄の教員がストレスに弱いわけでなく、労働環境の改善やメンタルヘルス対策が必要としている。
 県内では体育の免許を持つ教諭が音楽を担当する例もある。全国的にも同様で、担任不在の学級は教頭が担うほか、本来なら学校全体の指導計画を立てる教務主任を担任に充てる例もある。
 教頭や教務主任は本来業務に加えて負担が重なり、長時間労働が恒常化する。専門外の教科を担う教諭も、授業前の準備などに時間を取られ、時間外労働が増える。
 連合系シンクタンクの調査で、教員の残業時間は月平均123時間で厚生労働省が示す「過労死ライン」80時間を大きく超えるという結果もある。すぐにでも改革しなければ負の連鎖が続くばかりだ。
 文科省は22年度、教員不足への対策として、教員免許がなくても、博士号取得者や美術・音楽のコンクールなどで実績がある者を「特別免許状」制度を活用して採用するよう全国の教委に通知した。
 だが特別免許状は外国語や情報、福祉など教員がカバーできない専門分野を補助するのが本来の役割だ。児童生徒の育ちを見守る担任教諭とは、そもそもの役割が違う。
 教員不足への特効薬はないが、短期的には新規採用枠の拡大や退職教員活用による教員確保が考えられる。長期的には若い世代が魅力的と思える職場環境を整えることだ。
 保護者の協力も不可欠だ。生徒指導や部活動を学校任せにしてはいないか。教員が授業に専念できる環境をつくらねばならない。
 担任不在の学級は指導の継続性が失われ、子どもの学習意欲や学力に影響するという指摘もある。子どもたちの学ぶ権利を保障するためにも全ての人が協働すべきときだ。