<社説>習体制異例の3期目 平和構築へ自治体外交を


社会
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 中国共産党が習近平総書記=国家主席=の3期目続投を正式決定し、新指導部が発足した。最高指導部を習氏の側近らが独占し、後継者になる人材は入らず、習氏の在任が4期20年に及ぶことも視野に入る。巨大な経済力、軍事力を持ち、個人独裁に突き進む大国にどう向き合うか、世界が問われることになる。

 長期独裁を確立した習氏が台湾統一にどう取り組むのかは、沖縄にとっても重大な関心事だ。沖縄は、台湾で武力行使があれば巻き込まれる危険性が高い。一方で、歴史的に中国との関係が深い。沖縄には、政府の外交に注文を付け、独自の自治体外交を展開する構想と覚悟が必要だ。
 習氏は党大会で「祖国の完全統一は必ず実現しなければならないし、実現できる」と訴え、今世紀半ばまでの実現を目指す国家目標「中華民族の偉大な復興」の中に位置付け、「武力行使の放棄は約束しない」と明言した。軍の人事でも、台湾方面管轄の司令官だった人物を副主席に抜てきし、台湾問題での米国との対立に備えた布陣を取った。
 米バイデン政権は今月公表した国家安全保障戦略で中国を「中長期的な競争相手」とし、台湾海峡の平和と安定は米国の「永続的な国益」だと主張した。8月にはペロシ下院議長が中国の反発を無視する形で台湾を訪問した。今月19日には米海軍制服組トップが台湾侵攻の時期について「2022年や23年の可能性を排除できないと思う」と発言した。米国側の動きは中国を揺さぶる挑発にも映る。
 一方で、米政府は「一つの中国」政策は不変だと言い続けている。中国も、武力行使すれば国際的な孤立を招くことを理解しているはずだ。軍事的にも政治的にも経済的にも、リスクは極めて大きい。
 15日に沖縄市で開かれた集会でオンラインで講演した元駐中国大使の丹羽宇一郎氏は、北朝鮮の核開発問題解決を目指して03~08年に6回行われた「6者協議(6カ国協議)」の再開を提案した。丹羽氏は「習氏を議長にして6者協議を再開し、戦争に近づかない政策を始めるべきだ。それ以外に北東アジアの平和を維持する方法はない」と強調した。中国への向き合い方として一考に値する。
 来月予定されている日米共同統合演習は、中国を意識して南西諸島を中心に運用能力の向上を図るという。県内では異例の大規模なものとなり、中城湾港など民間施設も巻き込む。県民の負担と不安は増すばかりだ。戦争を望むのは誰か。沖縄県民の立場からは「有事」をあおる言動には反対せざるを得ない。
 まず必要なのは、偶発的な軍事衝突が起きないための信頼構築だ。米追随で軍備強化に走る日本政府に期待できるだろうか。平和のための協議の場を沖縄からも提案すべきではないか。沖縄県が積極的な自治体外交に乗り出すべき状況に来ている。