<社説>基地の環境汚染問題 国は直ちに原因の特定を


社会
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 駐留米軍は、兵士による事件や軍用機の事故、騒音に加え、基地に起因する環境汚染を引き起こし、地元に大きな負担を強いてきた。原因特定のための調査などを阻む日米地位協定の問題は解消されないままである。

 そしていま有機フッ素化合物(PFAS)の問題が住民に大きな不安を与えている。欠かすことのできない水の安全性に問題がある。日常生活に大きな影響を与えるものだ。
 きょう11月6日は「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」だ。戦争は人的被害のみではなく、深刻な環境被害を与えることにも目を向けようと国際連合が定めた。軍備が生活や命に優先されることはあってはならない。日米両政府が沖縄の不安に向き合い、調査に直ちに動き出すよう訴える。
 「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」は国際連合が2001年に定めた。紛争による環境被害は生態系と天然資源に影響し、先々の世代にまで問題が及ぶことを訴えるためだ。
 人類が地球に負荷を与えることで引き起こされる気候変動。温暖化などの気候の異常は紛争のリスクを高めるとも指摘される。環境も戦争の被害者であるとの視点は現代において忘れてはならないテーマである。
 沖縄では日本復帰前の1960年代末、米軍による毒ガスの貯蔵が発覚。沖縄側からの即時撤去の強い訴えによって知花弾薬庫から国外へと移送されたが、発覚から撤去完了まで2年以上にわたって住民は毒ガスにおびえる生活を強いられた。
 燃料漏れでは、1967年に米軍嘉手納基地でジェット燃料がパイプ破損によって地下水に漏れ出し、周辺の井戸からくんだ水が燃える「燃える井戸」の問題があった。
 2000年代に入っても、キャンプ瑞慶覧でのガソリン漏れ、北谷町の米軍射撃場跡地の地中からのドラム缶発見など枚挙にいとまがない。
 2016年に返還された北部訓練場跡地での米軍廃棄物の問題も残っている。
 そしていま、PFASの問題である。北谷浄水場の水源の比謝川水系から2016年に高濃度で検出され、問題が発覚した。
 自然環境ではほとんど分解されない物質で、その中でも発がん性などが指摘されるPFOSやPFOAは基地内で使用される泡消火剤に含まれている。
 市民団体がことし基地周辺自治体などで実施した住民の血中濃度検査で全国調査を上回る高い値が検出された。
 水の汚染は住民の健康、命に直結する。米軍は基地内立ち入り調査を拒んでいるが、耐えることはできない切迫した問題である。対策には汚染源の特定が必要で、それは政府の責務だ。合わせて米軍に排他的管理権の特権を与えている地位協定の改定に取り組む必要がある。