<社説>空港・港湾軍事使用 軍事要塞化に反対する

 自衛隊が先島の公共インフラを利用できるよう、南西諸島の空港や港湾を「特定重要拠点空港・港湾(仮称)」に指定し、集中的な改修や機能強化に乗り出す方針が、9日の防衛力強化に関する政府の有識者会議で示された。

 有事のほか、訓練など平時から使用できるよう各空港・港湾の利用方針も改定を求めていくという。これを認めれば住民生活や産業活動に日常的に軍事の制約が及び、沖縄戦と同様の軍民混在した戦場に行き着いてしまう。公共空間も巻き込んだ南西諸島の要塞(ようさい)化に断固反対する。
 既に10日に始まった日米共同統合演習「キーン・ソード」で、自衛隊が中城湾港や与那国空港の使用を組み込んでいる。公共インフラ利用の前触れであり、政府が後付けで手続きを進める実態がある。国会の議論も経ず既成事実を積み上げるやり方は許されない。地ならしにつながる統合演習での空港・港湾使用は直ちに中止すべきだ。
 政府や自衛隊が特に念頭に置くのが宮古島市の下地島空港だ。空自の主力戦闘機F15が離着陸できる3千メートルの滑走路は、那覇空港のほかは下地島空港しかない。中国の海洋進出や尖閣問題を踏まえて使用がたびたび浮上してきた。
 しかし、下地島空港には民間機以外は使用しないと取り決めた「屋良覚書」がある。復帰前の1971年に、琉球政府の屋良朝苗主席と日本政府が交わし、復帰後も歴代県政が踏襲してきた。軍事利用は認められない。
 大型輸送艦が入港できる平良(ひらら)港や石垣港などでも、政府は管理者の県に働きかけを強める構えだという。ただでさえ米軍基地が広大に占有する沖縄では、産業や防災面から基地内施設を軍民共用にするという議論はあったが、民間の空港・港湾へと軍事利用を拡大させるなど論外だ。
 民間の活動が圧迫されるだけではない。有事の際には攻撃の対象となって空港や港湾がある民間地が巻き込まれる。空港や港が損壊すれば島は孤立し、軍民混在の戦場に住民は取り残される。
 軍備対抗のエスカレーションは有事のリスクを高めていく。逃げ場のない離島県に暮らす住民を守るには衝突を回避する外交しかない。
 9日の政府有識者会議で岸田文雄首相は、自衛隊や海上保安庁が利用する公共インフラの整備に必要な経費など安全保障関連予算を確保するため、省庁横断の枠組みの創設に言及した。防衛費増額を巡り財務省は幅広い税目で国民負担が欠かせないとした。
 戦前の日本は増加する軍事支出を重税でも賄えず、国債発行を膨らませた。増税と借金やむなしの巨額な防衛費に躊躇(ちゅうちょ)しない岸田政権は、元来た道を戻っていないか。
 ロシアによるウクライナ侵攻や中国の軍事力増強といった危機に乗じた性急な国防議論にブレーキをかけ、冷静に検討する必要がある。



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