<社説>五輪汚職捜査に区切り 五輪の在り方問い直せ

 東京五輪を巡る汚職事件は、大会組織委員会元理事の高橋治之被告が4回目の起訴処分を受け、捜査に一区切りがつけられた。起訴内容だけでは問題の全容解明には程遠い。真相の究明を続けるとともに、五輪の意義を根本から問い直す機会にすべきだ。

 高橋被告は5ルートで総額1億9800万円の賄賂を受け取ったとされ、収賄で計3人、贈賄で計12人が罪を問われる。収賄側の3人はコンサルタント契約に基づく正当な対価だとして起訴内容を否認している。公判では「みなし公務員」として贈収賄罪が成立するかが焦点になろう。
 任意で事情聴取を受けた組織委元会長の森喜朗元首相と、同副会長だった竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)元会長には容疑は及ばなかった。2人は招致段階から高橋被告と深い関係にあり、招致委員会の理事長でもあった竹田氏は、フランスの司法当局から五輪招致買収疑惑で捜査を受けている。
 招致委から開催都市決定の投票権を持つ国際オリンピック委員側に2億円余りが送金されていた。竹田氏は「正当なコンサルタント料だった」と主張するのみで、契約に至った過程や資金の流れなど、いまだに説明できていない。疑惑の解明は道半ばだ。
 JOCなどは、弁護士や公認会計士らで構成する検討委員会を近く立ち上げ、組織委のガバナンス(統治)や情報開示の在り方などを協議する。山下泰裕JOC会長は「公正性、透明性を担保できる仕組みをどうつくっていくか、スピード感を持って対応していく」と述べた。招致の段階から、公正性をチェックする法整備や第三者機関の設置が必要だ。
 東京五輪は歴史的にどう評価されるだろうか。そもそも東京都民・国民の大多数が招致を望んでいたとは言えなかった。招致に当たって東日本大震災からの「復興五輪」と位置付けられたが、復興庁のアンケート調査では「復興に寄与した」という回答は3割にとどまった。森会長の女性差別発言をはじめ、開閉会式の演出担当者らの差別問題で辞任が続いた。経費が大幅に膨らむと当初から指摘されていた通り、倍増して1兆4千億円を超えた。
 数々の問題が指摘されているのに、簡単な報告書を残しただけで組織委は6月に解散した。徹底検証がなければ、2030年冬季五輪の札幌市招致は不可能だ。
 問題は日本だけにとどまらない。スポンサー収入で開催経費を賄うことで商業化が進んだことが今回の事件の背景にある。また、多くの開催国が国威発揚の機会とし、利権が絡み、立ち退きなどの人権問題も起こる。ロシアのウクライナ侵攻など、戦争も影を落としている。
 東京五輪の検証を徹底し、これを反面教師として世界で五輪の意義、目的を問い直すべきである。



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