<社説>止まらない閣僚疑惑 首相の任命責任免れない


社会
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 岸田文雄首相自身にまで疑惑が及ぶ事態となった。岸田首相は、昨年10月の衆院選に伴う選挙運動費用収支報告書に添付した領収書の一部にただし書きが記載されていない不備があったと認めた。

 この1カ月で閣僚3人が辞任に追い込まれた。今度は岸田首相だけではく松本剛明総務相の政治資金規正法違反の疑いが国会で問われ、秋葉賢也復興相、岡田直樹地方創生担当相も「政治とカネ」の問題が指摘される。首相の任命責任は免れない。
 首相は、ただし書きのない領収書について「出納責任者が領収書の発行名などから支出の目的を把握し、収支報告書の本体には目的を明記した」と説明した。コンビニでの飲食品や文房具などの購入が該当するという。公選法の規定では、領収書には支出の金額と年月日、目的を記載しな
ければならないと定めている。不備を確認した領収書の中には、宛名がないものもあるという。あまりにもずさんだ。
 松本氏は24日の参院総務委員会で、自身の資金管理団体の政治資金規正法違反疑惑について問われ、パーティー券を購入したものの、欠席した人がいたと認めた。実際に来ない人数を見込んで販売した場合は事実上寄付となり、政治資金収支報告書の虚偽記載の可能性がある。松本氏は政治資金や選挙を所管する閣僚だ。担当大臣としての責任が問われる。
 秋葉氏の公設秘書が昨年10月の衆院選で、報酬を受け取って選挙運動に従事した公選法違反(運動員買収)の疑いがあると写真週刊誌がニュースサイトで報じた。秋葉氏は自身の二つの政治団体が秋葉氏の妻と母親に、宮城県内の地元事務所の賃料として2011~20年に計約1400万円を支払っていたと明らかにした。
 岡田氏は自身が代表を務める政治団体がポスターを掲示してもらっている選挙区内の有権者に対し管理料を支払っていたと述べたが、公選法が禁じる選挙区内での寄付には当たらないとして違法性を否定した。
 この1カ月で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が次々と判明した山際大志郎前経済再生担当相が事実上更迭された。その後、山際氏を自民党のコロナ対策本部長に据えたことは理解に苦しむ。「法相は朝、死刑(執行)のはんこを押す。昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職」と失言した葉梨康弘前法相が更迭された。政治資金問題が相次いで発覚した寺田稔総務相も更迭された。
 今年7月の参院選の後は25年夏の参院選まで、衆院を解散しない限り大型国政選挙はない。「黄金の3年間」とも呼ばれるこの時期に「辞任ドミノ」とも言われる状況に陥っている。
 首相自身の任命責任や説明責任だけではなく、政権担当能力が問われている。