<社説>沖電大幅値上げへ 再エネ導入 一層推進を


社会
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 沖縄電力が2023年4月から電力料金の値上げに踏み切る。標準家庭で1カ月当たり3473円もの増額だ。電力大手の値上げ率としてこれまで経済産業省に申請された中で最も高い。

 燃料価格の高騰によるが、消費者は物価高にあえいでおり、さらなる追い打ちとなる。沖電は給与水準の引き下げなど経営効率化を進める計画だが、人件費削減など計画を着実に進めなければ県民の理解は得られないだろう。再生可能エネルギー(再エネ)の導入も一層推進していく必要がある。
 標準的な家庭の電気料金をモデルにすると値上げ率は39.3%で、月額8847円が1万2320円となる。商店など小規模事業者向けの低圧電力は2万2738円から3万219円と7481円(32.9%)の値上げだ。
 国内大手10電力のうち、沖電を含む6社が料金を値上げする方針だ。既に申請した4社のうち、一般家庭モデルの値上げ率は沖電が39.3%と最も高い。価格が高騰する化石燃料に電源構成のほとんどを頼っているからだ。
 県内の電源構成(2020年)は石炭が6割、液化天然ガス(LNG)と石油で3割強とほとんどを占め、再エネは1割に満たない。
 沖電は再エネの主力化を掲げ、電源構成の多様化に向けた取り組みも進めてきた。
 石炭、石油に比べ二酸化炭素(CO2)排出の少ないLNGの活用やバイオマス発電などだ。
 2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、CO2が発生しない水素の利活用に関する調査にも取り組んだ。
 波照間島で10日間の電力供給を風力由来の再エネで賄った実績がある。来間島では宮古島からの送電を切り離し、太陽光と蓄電池の組み合わせによって、島内の世帯に供給することに成功。再エネの地産地消を目指すマイクログリッドの全国初の取り組みとして注目を集めた。
 オイルショックと呼ばれる1970年代の原油価格の高騰に際し、日本の自動車メーカーは技術を磨き、その品質と燃費の良さを武器に北米市場で一気にシェアを拡大した。ピンチをチャンスに変えたと言える。沖縄のエネルギーシステムの転換点として今がそのときではないか。
 商船三井が久米島町で大規模な海洋温度差発電の実証実験を行い、沖縄科学技術大学院大学(OIST)は波力発電研究を手がけた。可能性を実用化できれば、島嶼(とうしょ)地域の新たなエネルギーシステムとして沖縄から発信することも可能だ。
 沖電は値上げ申請に伴って経営効率化に向けた計画を発表し、さまざまな経費削減を掲げた。人件費のほか、燃料費の低減などだ。着実な実施が必要だが、再エネの主力化に向けた取り組みは継続、拡充してもらいたい。