<社説>ウチナーンチュセンター 絆と文化継承へ不可欠だ


社会
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 海外から約2300人が参加して、県系人の絆を確かめた世界のウチナーンチュ大会が閉幕し、1カ月となった。多くの感動や出会いがあり、海外県人だけでなく沖縄に住む私たちも改めて世界に広がる「ウチナーンチュネットワーク」の大切さを再確認した。

 成功を喜ぶと同時に、今大会で得た教訓や課題をどう次代に引き継ぐかが今後問われてくる。その中でも県民挙げて取り組むべき課題が「世界ウチナーンチュセンター」の実現だ。沖縄の絆、歴史と文化の継承に不可欠であり、世界に広がるウチナーンチュ約42万人のネットワークをより強固にするためにも早期の実現を望む。
 ウチナーンチュセンターの構想は1980年代後半から「国際民族資料館」「移民資料館」として民間から提案されてきた。沖縄県も92年には「国際交流情報センター」の名称で基本計画に着手したが、予算などの面から断念した。
 元県政策調整監で、沖縄ハワイ協会顧問の高山朝光氏らが共同代表を務める世界ウチナーンチュセンター設置支援委員会(WUC)は2018年に発足し、建設への機運を高めようと議論をけん引する。
 WUCの提案では、センターは移民先の歴史を知る学習機能、県内各団体が協働する交流機能、海外県人がルーツをたどる手助けをする調査機能―に大きく分けられる。
 沖縄戦体験者が減少するのと同じように、移民1世も少なくなり、証言による継承は困難を極める。世代交代が進む中で、記録の収集・整理は重要な課題である。
 5世、6世となれば「ウチナーンチュ」のアイデンティティーが現在より希薄になるのは確実だ。WUC共同代表の一人で、ニューカレドニア移民の歴史を掘り起こした三木健氏が「ウチナーンチュのネットワークが残ると思ったら大間違いだ。残す努力が必要」と指摘するのは当然だ。
 県立図書館の「移民データベース」が開設から3カ月で8千人の利用があったように、海外県人が自らのルーツをたどりたいというニーズは多い。だが外国語スタッフの不足などで完全に対応するにはまだ課題が多い。
 資料収集や外国語対応などセンターに一元化できれば、さらなる成果が見込める。
 世界のウチナーンチュ大会は単なるお祭りでなく、移民県沖縄の歴史を継承する取り組みである。ウチナー民間大使、世界ウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション(WUB)設立、ジュニアスタディーツアー発足、ホストファミリーバンク発足、世界若者ウチナーンチュ事務局発足、世界のウチナーンチュの日制定、世界若者ウチナーンチュ大会の開催と大会ごとに次代へつながる成果を挙げた。
 第7回大会が残した成果としてウチナーンチュセンターを実現するためにも、県が先頭に立ち、全県民的な機運を高めてもらいたい。