<社説>同性婚訴訟「違憲状態」 早急に法整備の検討を


社会
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 同性パートナーが家族になるための法制度がない現状について司法が違憲状態にあると懸念を示した。立法府は直ちに法的措置を講じるべきだ。

 同性婚を認めていない法律の規定は憲法違反だとして同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が「憲法違反の状態だ」と指摘した。全国の五つの地裁で提起されている同種訴訟で3件目の判決となった。
 昨年3月の札幌地裁判決は違憲と判断、ことし6月の大阪地裁は東京地裁と同じく、同性婚を導入する法的制度がないことは今後、違憲となる可能性を示唆している。
 法的保護が受けられずに暮らすことには多くの困難が伴う。同性カップルには相続や配偶者控除といった法的権利は認められていない。
 3件の判決とも同性婚が認められないことで同性カップルと異性カップルが受けられる法的利益に差異があるとした。札幌地裁判決は法の下の平等を定めた憲法14条に明確に違反すると判断していた。
 県内在住の原告を含む東京訴訟の地裁判決は、同性パートナーと家族になる法制度がないことは憲法24条2項に違反する状態と指摘した。
 また、法制度の不存在について「同性愛者の人格的生存に対する重大な脅威、障害だ。個人の尊厳に照らして合理的な理由はない」と指摘。同性カップルが生涯を通じて家族になれない現状への懸念を強い言葉で表した。
 那覇市など200超の自治体がパートナーシップ制度を導入している。性的マイノリティーについての意識を問う2019年の全国調査では同性婚に「やや賛成」「賛成」が64・8%に達した。世論の理解が先に進んでいる。
 異性カップルの婚姻を前提とした伝統的な家族観が次第に変容し、同性婚についての理解が広がっている。こうした現状を受けて、司法が立法措置を促している。
 先進7カ国(G7)の中で同性婚や同性カップルの法的保護を認めていないのは日本のみだ。国会で当事者の法的な利益の保護や権利拡大に向けた議論自体が停滞しているのは立法府の不作為である。
 自民党は16年、性的少数者に関する「理解増進法案」を国会提出しようとしたが、見送りになった。伝統的な家族観を重視する保守層を支持者として抱えるため、党内に根強い反発があるからだ。
 立憲民主など野党3党が19年に同性婚実現のための民法改正案を提出したが、審議入
りすることなく廃案となった。
 同性愛者が望み通りに結婚ができない現状について「人格的生存に対する重大な脅威」と断じた東京地裁判決は重い。司法からの強い問題提起だ。
 政府は「慎重な検討を要する」と問題を先送りする姿勢だが、国民の中での理解の広がりに逆行している。国会で法制化の議論を直ちに進めていく必要がある。