<社説>’22回顧・政治 「辺野古断念」民意は不変


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 選挙イヤーといわれた2022年は県内最大の政治決戦となる知事選を天王山に、首長・市町村議会合わせて30の選挙が実施された。

 各選挙を通して示されたことが二つ挙げられる。
 知事選、参院選の二つの全県選挙では、辺野古新基地への反対を明確にした候補が勝利した。辺野古断念を求める民意は変わらなかった。
 もう一つは自公が7市長選で全勝したことが象徴するように、基地問題以外の課題が主要争点となった選挙で、県民はコロナ禍で傷んだ生活の再建を重視したことだ。
 玉城デニー知事をはじめ、各首長、議会議員は選挙で示された民意を尊重せねばならない。「辺野古が唯一」を繰り返す政府も、改めて沖縄の民意に耳を傾けるべきだ。
 23年も最大の政治課題となるのは普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設問題だ。国と県の係争が続くが、原点は何かを問い直すべきだ。
 普天間移設は「世界一危険」とされる市街地からの基地撤去が最優先である。日米での返還合意当初から県内移設を前提にした議論が繰り返されたが、責任は問題の本質から目を背けた日本政府の無策にある。米国内でも不要論のある海兵隊の基地が沖縄に必要なのか。「新基地反対」という沖縄からのボールは投げられている。日米両政府がどう受け止めるか注目したい。
 各選挙の論戦を通して、沖縄の自立に向けた課題も明らかになった。施政権返還を契機に、50年前から始まった沖縄振興の枠組みは継続されたが、このままでよいのか。県知事選、参院選では各候補から県の裁量拡大を重視する主張、全国と同様の予算措置へ移行するといった主張が繰り広げられた。
 基地問題の解決を排除した振興計画、内閣府による一括計上方式が、沖縄の自立、政策立案能力を阻害しているという指摘は従来からある。
 施政権返還から半世紀を過ぎた今、次の50年に向けた出発点となる23年は改めて沖縄の自立を問うことが政治に求められる役割だ。
 一方で各選挙を通して鮮明になったのは、故・翁長雄志前知事が提唱した政治的枠組みオール沖縄の退潮だ。
 翁長氏の後継だった城間幹子前那覇市長が、那覇市長選で辺野古問題を争点からぼかして当選した知念覚氏を支援したことで可視化した。
 「辺野古反対」の主張は、全県選挙でこそ通じたものの市レベルでは生活・福祉の課題の前に訴求力を欠いた。
 オール沖縄の出発点は「イデオロギーよりアイデンティティー」だった。沖縄のことは沖縄が決めるという当然の主張の下に、中道、一部保守、革新勢力が結集できたのだ。日米両政府といった強大な権力と対峙(たいじ)するとき、県内に分断があってはならない。選挙イヤーを終えた今、県内政治勢力の再構築も注視したい。