<社説>’22回顧・基地 沖縄戦の再来を拒否する


社会
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 日本政府が推し進める南西諸島の軍備増強は、「要塞(ようさい)化」と同時に「戦場化」にも踏み出した。11月の日米共同統合演習では離島奪還を想定し、民間港や空港が使われ、与那国島で陸上自衛隊の戦車が一般道を走った。

 敵基地攻撃能力(反撃能力)保有と防衛費倍増を決定し、日本の防衛政策は大転換した。その最前線とされる南西諸島は「有事」となれば戦場になる。「有事」は起きてはならない。住民として、沖縄戦の再来は断固拒否する。
 この1年、基地問題では何一つ前進はなかった。事件・事故は依然として多発し、PFAS汚染も解明されず、爆音など訓練に伴う被害や危険も増えこそすれ減ることはなかった。県などの中止要求を無視して那覇軍港でオスプレイなどの離発着が常態化し、危険は増した。地位協定改定も全く動かなかった。
 強引に既成事実化されていくことへの反発も強まっている。長射程ミサイルの配備を巡り石垣市議会は19日、同名の2件の意見書を可決した。文言調整がつかず、与党提案が全会一致、野党提案が賛成多数だった。両方とも「専守防衛のためのミサイル配備」というこれまでの説明と違うとして、情報公開や十分な説明を求めた。当然の要求だ。
 まず問題なのは「潜在的」ではない「現実的脅威」が今あるのかどうかである。確かに、北朝鮮がこれまでにないペースでミサイル実験を繰り返し、中国は、台湾周辺で激しい演習を行い、尖閣諸島の領海侵入も重ねている。
 では、北朝鮮が日本に先制攻撃を仕掛ける可能性があるだろうか。仕掛ければ米日韓との全面戦争になり、国家そのものが消滅するだろう。休戦状態にある米国と対等に交渉するために、米本土を核攻撃できる能力を確保しようとしていると見るのが妥当だ。
 中国も同様だ。演習や外交で強く出られたら、相応に強く対応するということを繰り返しているのである。もし、経済大国、軍事大国の米中が戦端を開けば、世界経済は大混乱し、世界大戦へ、全面核戦争へとエスカレートする。冷静に考えれば、中国や北朝鮮が米国や日本に戦争を仕掛けるのはあまりに愚かだ。
 重要なのは、日本の敵基地攻撃能力保有や防衛費倍増が米国の要求であることだ。米国の言うままに軍事力で「抑止力」を強化するとどうなるのか。この抑止力とは「威嚇力」だ。威嚇合戦には際限がない。偶発的に戦闘が起きることがある。あるいは何らかの理由で「抑止」が破れる。そうして戦争は起き、起きたら地獄なのである。軍事力以外の方法を探るべきだ。
 米国は、日本を巻き込んで台湾や南西諸島での戦争を準備している。沖縄県民が受け入れられるはずがない。戦場化に反対する全県組織が立ち上がりつつある。沖縄戦の再来を食い止めるために今、行動するしかない。