<社説>’22回顧・県内経済 脱コロナの成長戦略を


社会
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 新型コロナウイルスの抑え込みによって県経済は回復の兆しが見え始めた1年だった。一方で燃油、原材料費の高騰が中小企業の経営を圧迫し、予断を許さない状況だ。

 人流が回復し、観光の需要が高まった。消費も回復傾向をうかがわせるが企業では人手不足感が強まっている。コロナ収束を見据えて県内経済の成長戦略をどう描き、具体化させていくかが重要だ。
 日本銀行那覇支店が発表した12月期の県内企業短期経済観測調査(短観)で、企業の景況感を示す全産業の業況判断指数がプラス22となった。
 前回9月調査から10ポイント改善し、2期連続のプラスだ。観光を支える宿泊・飲食サービスで上昇幅が最大だった。
 資材価格の高騰による価格転嫁もあり、消費が右肩上がりで回復し続けるかは見通せない。消費の落ち込みで従業員を減らした企業もあり、急な需要回復に対応できず、人手不足感が強まっている。
 国際線が就航を再開し、国際クルーズ船も受け入れが始まる方向だ。基幹産業の観光業にとっては明るい材料だ。ただ、円相場など不安定要因は残る。感染者が増加の傾向にもあり楽観はできない。中小企業にとってはコロナ関連融資など支援策が効果を上げているが、来年4月以降には返済開始を控えていることも懸念材料だ。
 ロシアによるウクライナ侵攻で燃料の供給が世界的に不安定になり、円安が拍車をかけた。沖縄電力は来年4月からの値上げを国に申請した。
 標準家庭で4千円近い値上げとなる。事業者向けも軒並みの値上げで、家計や企業活動への影響は必至だ。
 全国で猛威を振るう高病原性鳥インフルエンザが県内でも確認された。発生した金武町の養鶏農場の周辺農家が出荷制限を受けるなど影響した。
 封じ込めについては2020年の豚熱の反省を生かして関係機関の連携が行われたが、発生農家からの通報の遅れがあった。課題を解消して万全の防疫体制を築きたい。
 2期目が始まった玉城デニー知事は、選挙戦でコロナ禍の経済対策として「収束の段階で成長戦略を組み込む」と言及。2期目の重点項目の三本柱の一つに「県経済と県民生活の再生」を掲げた。
 島嶼(とうしょ)県の地理的不利性をアジアに隣接する結節としての優位性と捉え、可能性を生かす施策を展開する考えだ。新興企業の成長支援や「稼ぐ力の強化」「持続可能な観光地の形成」など掲げたキーワードを具体化してもらいたい。
 外的要因の影響を受けやすい観光業に依存した構造であることも県経済の課題だ。新たなリーディング産業の創出が望まれる。化石燃料への依存を減らすため、再生可能エネルギーの導入も一層推進する必要がある。
 総合的な成長戦略を描き、着実に施策展開していくことが必要だ。