<社説>沖縄この1年 平和な島への道筋を


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 新型コロナウイルスが初確認されて3年目になる2022年もきょうで暮れる。電気や燃油などエネルギー価格の高騰は生活の足元を脅かし、国内外情勢も安閑としてはいられない。世相がすさむ一方で今年は世界のウチナーンチュ大会が開催されるなど世界に活路がある沖縄特有のポテンシャルも確認した。コロナ禍という災いを転じて、来る年を福となす。持ち前の潜在力を確信し歩を進めたい。

 8月にコロナ感染の第7波が襲った県内は、新規感染者数が1日当たり6千人を超えるなど最多を記録した。亡くなった人も増え、今も第8波襲来の恐れの渦中にある。
 こうした国内外の新型コロナ感染の拡大が続く「惨事」に便乗したとしか思えない。人々がコロナ禍に気を取られ、熟慮する機会もないまま、政府は安保関連3文書を発表し、県内の自衛隊増強策を打ち出した。
 沖縄の日本復帰50年は同時に自衛隊配備の節目でもある。自衛隊施設は来年、石垣島にも完成する。米国と中国は台湾を巡って対立を深め、その台湾に近接する与那国島には自衛隊のミサイル部隊が配備される。政治家は「台湾有事は日本有事」と言い散らす。対立の矢面に立たされるのは沖縄にほかならず、多くの人々の命を危険にさらすとは専横も極まった。
 専守防衛という戦後一貫してきた安全保障政策は、盾の役割を大きく逸脱し「敵基地攻撃能力」という矛の機能へ大きく変貌させた。沖縄にきな臭さを一層漂わせる。
 その先島では11月に日米共同統合演習「キーン・ソード23」が実施された。与那国島の一般道路を自衛隊の「16式機動戦闘車(MCV)」が走行し、離島での演習強化や民間インフラ使用が進んだ。
 上陸、地上戦を想定しているのか。振り返れば、明治末から昭和初期に言論を繰り広げた桐生悠々の論説を想起する。信濃毎日新聞主筆時代の社説「関東防空大演習を嗤(わら)ふ」にはこうある。「帝都の上空に於て、敵機を迎え撃つが如き、作戦計画は、最初からこれを予定するならば滑稽」と。事前に尽くすべきを尽くさぬ今を彷彿(ほうふつ)とさせる。
 一方で今年は参院選から県知事選、市町村の首長、議員の選挙が相次いだ。多くの選挙で投票率が下がったのは憂慮される。
 10月には「世界のウチナーンチュ大会」が6年ぶりに開催された。世界に広がるネットワークは誇るべき多様性と、島にみなぎる活力を実感させた。男子プロゴルフで比嘉一貴選手(27)は初の日本ツアー賞金王を獲得し、プロ野球では県勢選手の活躍が島を沸かせた。
 そして首里城正殿は11月に起工した。惜しまれることに首里織物の宮平初子さんら重鎮が鬼籍に入った。文化創造に尽くした気概を継ぎ、明ける2023年は平和な島への道筋をつける年としたい。