<社説>新年を迎えて 沖縄の独自性発揮しよう


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 2023年を迎えた。沖縄への観光客が戻りつつある。明るい兆しだ。それだけに沖縄は正念場の年だ。観光立県として長引くコロナ禍で傷んだ経済をどう立て直すか。全国的な物価や燃料費の高騰は、輸送コストがのしかかる離島県には痛手が特に大きい。経済の立て直しと県民の暮らしの安定をどう図るかが最大の課題である。実態の把握とともに沖縄の地域性に適した経済政策で実効性を高め、課題解決を図るべきだ。

 一方で岸田政権は安全保障政策を大転換した。敵基地攻撃能力(反撃能力)を保持し沖縄の自衛隊を大幅に増強する方針だ。全国の米軍専用施設の約7割が存在し辺野古新基地建設が進む中、沖縄の基地負担は飛躍的に増える。
 沖縄の歴史や国際情勢を踏まえ、一層の負担をはね返す戦略が必要だ。武力ではなく対話や外交による平和の提起など沖縄ならではの取り組みを提唱する。沖縄の独自性を大いに発揮する年にしたい。
 日本復帰50年の節目だった昨年から第6次となる沖縄振興計画がスタートした。10年ごとの計画は5年以内に見直されることになった。即応性と実効性が問われている。
 しかし近年のコロナ禍や燃料費の高騰、物価高は経済発展を阻害している。観光を基幹産業とする沖縄は全国と比べ影響は大きい。医療態勢が逼迫(ひっぱく)しやすく脆弱(ぜいじゃく)な離島県・沖縄に適したウィズコロナの在り方の模索は続く。
 物価高騰は経済界だけでなく、県民の生活も直撃している。最もしわ寄せを受けるのは低所得層だ。沖縄は子どもの貧困率が全国の2倍に上る。子どもを見据えた低所得層への支援など沖縄の事情に合った対策が早急に必要だ。
 一方、沖縄の基地負担は政府が言う「負担軽減」と逆行している。安保関連3文書は沖縄の基地強化をうたい、敵基地攻撃能力の保持を明記した。これにより敵と目された国は日本の軍事施設への攻撃能力をさらに強めるだろう。
 沖縄で増大するのは、演習・訓練激化による騒音や事故など平時の負担だけではない。有事が起きれば、基地があるため攻撃される恐れが大きい。命に直結する負担は飛躍的に増す。県民や県はこの事態に向き合わねばならない。県民の多くが昨年の復帰50年で、沖縄の変わらない基地負担を再認識し、軍事力によらない「真の平和」への誓いを新たにしたはずだ。
 増大する負担にどう対抗するか。鍵は「人間の安全保障」と「自己決定権」だと考える。武力による安全保障ではなく、貧困や差別の解消、気候変動問題の解決や軍縮を図る「人間の安全保障」は一層追求されるべきだ。沖縄はその発信拠点にふさわしい。軍事の要石ではなく平和の要石となれるよう「命どぅ宝」の思想を誇りに声を上げていこう。そのためにも自分たちの未来は自分たちで決めるという自己決定権が大切になる。