<社説>23年県内政局展望 軍備増強の流れに対峙を


社会
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 平和な沖縄を願う県民の声を国政に届けるという意味において、2023年は重要な一年となる。南西諸島の軍備増強がこのまま推し進められれば、基地負担は増大し、県民の生活は深刻な打撃を受けるからだ。危機感をあおって強行される軍備増強の流れにどう対峙(たいじ)するか、県内政党の真価が問われる。

 政府与党が主導した安保関連3文書の改定で敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が明記された。防衛費倍増も決まった。ことしの政局は防衛費増額に伴う増税が論戦の柱になるとの報道各社の見立てもある。
 軍備増強の財源に焦点が移っているとの見方にも取れるが、沖縄の実情に照らしても強い違和感を拭えない。外交努力を尽くして緊張を緩和し、地域の安定を図るのが平和国家の役割ではないのか。
 ロシアのウクライナ侵攻や中国の海洋進出、北朝鮮の動向が軍備増強の理由に挙がるが、有事をあおることに終始し、戦後一貫して守った平和国家の国是を曲げるような防衛政策の大転換に関する論戦は低調だった。
 米軍基地の集中する沖縄においては、自衛隊の増強によって基地負担が増幅される。ミサイル基地などを置くことによって、諸外国から狙われることになるのではないかとの懸念が強まるのは当然のことだ。
 石垣市議会は市内の駐屯地内に配備が見込まれる長射程ミサイルに関して意見書を可決した。「専守防衛のための自衛隊配備」とのこれまでの説明とは異なっているとして十分な説明を求めるものだ。背景には市民の間に不安が高まっていることがある。
 通常国会は1月下旬召集予定だ。県民の不安を一顧だにしない審議に終始し、県民生活に逆行するような施策や予算が素通りするようなことがあってはならない。沖縄の民意を体した論戦を県選出・出身国会議員に強く求めたい。
 国政では4月に統一地方選、衆院補欠選が控えるが、ことし県内では全県選挙の予定がない。来年の県議選に向け、県内各党は党勢拡大や政策の浸透を図る大事な一年になる。
 昨年の県内選挙では、執行された7市長選で自民・公明陣営が全勝した。対抗する「オール沖縄」は知事選と参院選に勝利し、互いに影響力を保った。
 有権者にとって身近で切実な問題である貧困や生きづらさといった暮らしの課題を解決する政策を打ち出す努力が各党に求められる。
 「誇りある豊かさ」の実現に向け、生活者の視点から政策を組み立ててもらいたい。
 日本復帰から半世紀が過ぎ、新たな50年を刻み始める年でもある。50年後の沖縄を見据えた大局的な政策論争を展開する必要もある。
 各党ともに復帰100年の沖縄を展望した活発な論議を望みたい。