<社説>障がい者雇用「代行」 共生社会の実現に努めよ

 真の共生社会の構築につながるのだろうか。障がい者雇用の内実を見極める必要がある。

 法律で義務付けられた障がい者雇用を巡り、企業に貸農園などの働く場を提供し、就労を希望する障がい者も紹介して雇用を事実上代行するビジネスが急増している。厚生労働省などの調査によると昨年11月末現在で首都圏や愛知県、大阪府、九州を中心に85カ所の農園がある。利用する企業は約800社、働く人は約5千人に上る。
 企業にとっては、障がい者の法定雇用率を満たす手段として活用できる利点があろう。働く側も十数万円の月給が得られ、金銭面でメリットがある。しかし、この代行ビジネスは必ずしもいいことずくめとは言い切れない。
 利用する大半の企業の本業は農業とは無関係で、障がい者を雇うために農作物栽培を始めた。作物は販売せず、社員に無料で配布するケースが多い。違法ではないが「障がい者の法定雇用率を満たすためで、本当の意味での雇用、労働とは言えない」という指摘もある。厚労省は3月までに対応策を打ち出す方針だ。
 私たちはなぜ共生社会の構築を目指すのか、改めて考えなければならない。
 障がい者雇用は、障害者雇用促進法で一定規模の企業に雇用率が義務付けられている。企業は障がい者が能力や適性を発揮し、生きがいを持って働けるような職場づくりに努めなければならない。その意義は障がい者支援にとどまるものではない。
 障がいを含むさまざまな個性を持つ者が互いを尊重し、特性を生かしながら働くことができる社会こそ真の豊かさを保障する。その理想に近づくには課題もあり、試行錯誤が繰り返されよう。しかし、それを避けては共生社会の実現はままならない。
 障がい者雇用に詳しい慶応大の中島隆信教授は「多様な人が働けるよう配慮することは、企業の成長につながる。企業は『障がい者雇用はコストではなく成長への投資』と意識を変える必要がある」と語っている。
 単に法律に定められた雇用率を達成すればよいのではない。障がい者は働く喜びを実感しているか。企業は共生社会の意義を認識し、実践しているか。SDGsでうたう持続可能な社会の実現につながるのか。代行ビジネスについても、これらの側面から評価しなければならない。
 沖縄労働局が昨年12月に発表した、2022年の県内の障がい者雇用状況によると、民間企業(43・5人以上規模)の障がい者実雇用率は2・97%と過去最高を更新した。18年以来2度目の全国1位である。
 それ自体は高く評価できよう。しかし、喜んでばかりではいけない。この数値が豊かな共生社会を反映したものなのか、不断の検証と実践が求められる。




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