<社説>民生委員不足 ゆいまーるを社会制度に

 全国で民生委員のなり手不足が深刻だ。厚生労働省のまとめでは、昨年12月の一斉改選の結果、定数約24万人に対する欠員は1万5191人に上った。中でも沖縄の状況は厳しく、充足率が全国最低の74.4%だった。

 民生委員は地域社会と行政の支援を結ぶ福祉の最前線に立つ人々だ。定員不足が続けば、支援が必要な人に届かなくなる事態も想定される。
 沖縄に根付く相互扶助「ゆいまーる」の精神だけでは追い付かない。民生委員に対する行政支援を含め、時代に合った「ゆいまーる」を社会制度として再構築すべきだ。
 今回の改選で沖縄の民生委員定数1979人に対し、実際の人数は1473人にとどまった。那覇市が定数502に対し、実人数315(充足率62.7%)である。全国の中核市がほぼ90%台なのに比べ、極端に低い。
 全国的にも少子高齢化や、60歳を過ぎても働く人が増えたことなどから民生委員のなり手は少ない。沖縄では復帰に伴い制度が導入され、認知度が低いとされるが、既に半世紀たつ。沖縄だけが特殊な状況にあるわけではない。
 神戸市は大学生を対象に民生委員活動体験を実施した。なり手確保のアイデアを若者に出してもらい、次代のなり手確保につなげる試みだ。石川県野々市市では地区で活動する約100人の委員全員にタブレット端末を貸与し、効率化を進める。各地で知恵を絞っているのだ。
 県内でも糸満市では、民生委員が小学校でうちなーぐちを指導するなど積極的に地域と関わる方策を進める。
 自治体がこうした取り組みに対し、予算措置などで支えていく必要がある。民生委員のなり手は自治会からの推薦が主だが、そもそも自治会加入率が低いのが現状だ。地域の人材を掘り起こすために、自治会の強化策も行政と住民が共に考えねばならない。
 民生委員の確保は、長い目で見れば地域社会を再構築する取り組みだ。人材確保へ自治体の積極支援を望む。
 個人の善意に頼る現状から視野を広げることも必要だ。地域福祉に詳しい同志社大の上野谷加代子名誉教授は「実情に応じて企業や社会福祉法人に担い手を広げるといった柔軟な対応が求められる」と指摘する。高齢者の見守り事業などを実施する企業は多くある。そうしたネットワークを組織化できないか。
 民生委員は独居高齢者やひとり親、障がい者の訪問や相談、支援機関へのつなぎ役など活動は多岐にわたる。複雑かつ多様化する社会では、相談を受けても個人の力では及ばない場面が出てくる。委員そのものが不足する現状では、個でなく組織として対処する仕組みがいる。
 無報酬の民生委員には敬意を表する。それだけに「奉仕の心」のみに頼ることはできない。国をはじめ、長期的な視野での制度設計を求める。




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