<社説>米軍の下地島訓練申請 なし崩しの軍事拠点化だ


社会
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 米軍が訓練を目的とした下地島空港の使用申請を空港を管理する県に提出した。今月31日、CH53大型輸送ヘリコプターなどを使用し、米軍普天間飛行場との間を行き来する予定だった。県の嘉数登知事公室長は訓練自粛を口頭で在沖米海兵隊に求め、18日になり米海兵隊は訓練を取りやめた。

 米海兵隊は「人道目的、災害救援などのためのヘリコプター訓練を県が認めなかった」と説明している。しかし、今後も訓練目的の空港使用を県に求める可能性がある。「屋良覚書」に照らしても下地島空港の軍事利用は認められない。
 米軍が県に使用申請を提出したのは今月13日であった。日米安全保障協議委員会(2プラス2)の翌日であることを見逃すわけにはいかない。
 昨年12月に政府が閣議決定した安保関連3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を打ち出している。2プラス2はその方針を日米双方にまで拡大することを確認した。米軍による今回の使用申請はそれを実行に移すものだったと言えよう。
 安保関連3文書によって日本の安保政策は大きく転換した。米国は「同盟の抑止力を強化する重要な進化として、強い支持を表明した」と歓迎している。米軍と自衛隊の一体化が加速する中で、下地島空港の軍事拠点化がなし崩し的に進む恐れがある。到底容認できない動きだ。
 今回の使用申請に先立って、自民党国防議員連盟の一員として宮古島市を訪れた佐藤正久参院議員は、下地島空港を「県管理ではなく国管理にしたら」などと主張した。このような発言も、安保関連3文書や2プラス2で示された民間空港軍事利用の動きと軌を一にするものであろう。
 国管理を主張する佐藤氏の発言は「屋良覚書」や下地島空港を県管理空港にした経緯を度外視するものであり、空港管理者である県や地元の声を無力化するものだ。
 下地島空港の軍事利用を巡る激しい地域対立を背景に1971年、当時の琉球政府と運輸省の間で「屋良文書」は交わされた。(1)琉球政府(復帰後は県)が所有・管理し、使用方法は管理者である琉球政府が決定する(2)運輸省として、航空訓練と民間航空以外の目的に使用させる意思はなく、これ以外の使用を琉球政府に命令する法令上の根拠を有しない―と記している。軍事利用を否定しており、国の一存で使用方法を命じることもできないのである。
 給油などを理由とした米軍機の飛来は80年代から恒常化しており、「屋良覚書」は履行されていない。しかし、そのことを当然視したり、過去の文書として放置したりしてはならない。
 「屋良覚書」は国会答弁などで確認されてきた。その原点に立ち返り、住民生活の向上や地域振興に資する下地島空港の運営を追求すべきだ。