<社説>第4次嘉手納爆音訴訟 軍増強より被害救済急げ

 急速に進む軍備増強の裏で苦しんでいる人々がいる。基地周辺で暮らし、被害を訴えている人々が人間らしく生活できる権利を保障することは国の責務のはずだ。軍備増強に走る前に、憲法が規定する人格権や平和的生存権に基づき、基地被害からの救済を急ぐべきだ。

 米軍嘉手納基地周辺の住民が米軍機の騒音で睡眠妨害や身体的被害を受けているとして、夜間・早朝の飛行差し止めや損害賠償などを国に求める「第4次嘉手納爆音訴訟」の第1回口頭弁論があった。国側は争う構えだ。
 1982年2月の第1次訴訟の提起から既に41年が経過している。損害賠償は認められてきたが、「静かな夜を返せ」という住民の願いは司法に退けられてきた。騒音被害は緩和するどころか、外来機飛来の常態化で住民負担は高まっているのである。
 第1次訴訟では907人だった原告数は4次で3万5566人にまで増えた。基地騒音訴訟で国内最大の原告数である。原告数の増加は基地周辺で暮らす住民が抱く危機感と、抜本的な解決を先送りにしてきた国に対する強い憤りを反映したものである。
 原告住民は気軽に国を訴えているわけではない。深刻な思いを募らせ、訴訟団に加わったのである。爆音による健康被害から脱したいと訴える人、静かで安心して暮らせる沖縄を子や孫に手渡したいと誓う人、それぞれが切実な願いを込めて提訴したのだ。
 日夜爆音にさらされ続ける住民の苦境を直視するならば、国はマンモス訴訟団の訴えを待つまでもなく基地被害の解消に向けた抜本策を進めるべきなのだ。1次訴訟提起から数えても40年余、住民の苦しみは放置され続けたのである。これまで国は何をやってきたのだろうか。
 しかも、基地被害は軽減されるどころか増大する可能性すらある。嘉手納基地所属のF15戦闘機は老朽化を理由に退役し、F22の配備が進められている。そのことによる騒音激化が懸念されている。周辺住民や自治体の反対をよそに、防錆(ぼうせい)整備格納庫の整備が強行されようとしている。これも住環境の悪化につながるものだ。
 日米の外務・防衛担当閣僚による今月12日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で南西諸島での防衛体制強化を確認したことも、基地機能の強化につながる可能性がある。「台湾有事」が喧伝(けんでん)される中でなされた日米両国の合意によって、住民の願いが遠のいてはならない。
 第1回口頭弁論で原告代表の福地光さんは法廷で「有事の際も、真っ先に一番被害を受けるのは基地の周りに住まなければならない私たちです」と訴えた。国は住民の危機感に正面から向き合い、爆音被害を解消すべきだ。司法も「第三者行為論」に固執し、飛行差し止めに躊躇(ちゅうちょ)するようなことがあってはならない。




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