<社説>新型コロナ5類へ 実態見極め慎重な対応を

 岸田文雄首相は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、今春に季節性インフルエンザ同等の「5類」に引き下げると表明した。5類になれば、屋内でもマスク着用が原則不要となり、自分や家族が感染しても行動制限がなくなる。3年にわたる政府の新型コロナ対策は平時に向け大きな転換点を迎える。

 致死率や重症化率が低下したことが理由だ。低迷する経済活動や社会生活を早く回復したい狙いは理解できる。
 ただ現在、第8波が進行中だ。死者数は急増し、1日で500人を超える日もある。5類移行表明で対策が緩み、感染者や死者が増加することがあってはならない。さらなる医療逼迫(ひっぱく)への懸念も拭えない。政府には、実態を見極め、それに適した対応が求められる。時には対策を強めることも必要だ。緩和一辺倒の拙速な判断は避けるべきだ。
 新型コロナの現行の位置付けは、結核など2類よりも幅広い措置が可能な「新型インフルエンザ等感染症」。5類になれば、限られた発熱外来で実施していた検査や診療は一般の医療機関に広がる。感染者で7日間、濃厚接触者で5日間の待機期間はなくなる見通し。検疫法の対象外で、海外からのウイルス流入を防ぐ水際対策は原則適用できない。緊急事態宣言などを定める特別措置法の対象外となる。
 これだけの大きな政策転換である。国民に「コロナは終わった」という誤ったメッセージに受け止められかねない。
 5類移行で感染力が弱くなるわけではない。海外では対策緩和で感染爆発が起きた例もある。流行を繰り返す中で医療逼迫を招く恐れもある。高齢者ら重症化リスクの高い人々の不安も強まるだろう。
 疲弊した医療現場スタッフや重症化リスクの高い人々の不安を解消するための対策や説明は必須だ。医療費の公的負担は段階的に縮小する見通しだが、生活困窮者への対処を忘れてはならない。ワクチン接種の公費負担を継続するなどの措置が求められよう。
 学校現場でも「子どもたちの安全が守られなくなるのでは」との不安がある。コロナ感染で発熱する子どもたちがいまだに後を絶たないからだ。学校の感染状況に応じた安全策は引き続き必要だ。
 県内の新規コロナ感染者はいまだに1日500人を超える水準だ。インフルエンザも警報が発せられるほど流行している。同時流行によって医療逼迫のリスクがある。油断できない状況だ。実態を見極めた対策が引き続き必要だ。
 コロナが5類になれば、行政機関のさまざまな措置が縮小や廃止されるに伴い、個人の対応がより重要となる。だが新たな変異株が登場した場合は強力な感染防止策が取れず、緊急対応が遅れかねない。政府は個人の対応任せではなく、その時々の実情に応じた的確で迅速な対応ができるよう、引き続き緊張感を持ってコロナに向き合うべきだ。




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