<社説>少子化対策 財源確保策明示すべきだ


社会
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 深刻化する少子化対策の強化に向けた政府の作業が始まった。「異次元の少子化対策」を掲げる岸田文雄首相の肝いりの政策だ。ただ、現時点で裏付けとなる財源確保策は示されておらず、説明が不十分だ。政府は財源をどうするかを明示し、国会審議に臨むべきだ。

 岸田首相が異次元の少子化対策を掲げたことを受け、自民党の甘利明前幹事長が消費税増税の可能性に言及し、波紋を広げた。国民の不満を招きかねず、4月の統一地方選を控える中で政権運営の火種となる可能性もある。だからといって財源論議を回避することはできない。
 岸田首相は少子化対策を最重要課題に掲げ、23日に召集された通常国会の施政方針演説では子ども・子育て政策への対応を「先送りの許されない課題」とも述べた。
 そのことに異論はない。ただ、少子化問題は今に始まったのではない。2017年の推計では出生数が80万人を割るのは30年だった。それが22年の出生数で80万人を割る見通しだ。想定を上回って少子化が加速しているのだ。
 少子化傾向に歯止めを掛けるため、政府は1994年に保育所整備を盛り込んだ「エンゼルプラン」を打ち出して以降、さまざまな対策を講じてきた。これまでの政策が機能してこなかったのではないか。その認識を問いたい。
 首相は施政方針演説で「新しい資本主義」に言及し、「『持続可能』で『包摂的』な新たな経済社会を創っていく挑戦だ」と述べた。その社会をつくり上げるための最重要政策が子ども・子育て政策であるという。日本の少子化は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際とも呼ぶべき状況だとの危機感も披歴した。
 将来像を見据えた政策展開は重要だが、そのためにも子育て世代を含め、社会を構成する一人一人が生きやすい社会を目指すべきである。その一つとして仕事と子育ての両立に取り組む必要がある。
 男性の育児休業の取得率は21年度で13・97%。政府は「25年までに30%」を目標としており、達成にはほど遠い。女性の取得率は85・1%。育児の負担は女性に偏っている。休業中の給与減が男性の取得率が伸び悩む一因となっている。しかし、子育ては夫婦双方が参加すべきであり、それを全面的に支援する社会システムが求められる。
 働き方改革も子育て支援政策の3本柱に掲げられており、政府検討会議などで議論が進む。児童手当の拡充を含め、新たな給付制度の創設などが検討されるとみられる。現金給付を押し出すのは低迷する内閣支持率対策との見方もある。政権の思惑が先行し、「異次元」という言葉だけが踊るばかりでは、国民の理解と支持は得られない。
 3月にはたたき台をまとめる方向だ。それを待つまでもなく、国会の場で徹底して議論を交わしてもらいたい。