<社説>PFAS土壌汚染 基地内立ち入り調査急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県環境部が実施した調査で、宜野湾市立普天間第二小学校内で採取した土壌から、有機フッ素化合物(PFAS)の一種、PFOSが高い値で検出された。米軍基地が周辺にない糸満市内の調査地と比べて16.5倍の高さだ。

 学校に隣接する米軍普天間飛行場が汚染源とみていいだろう。だが、米軍に排他的管理権を認めた日米地位協定が壁となり、流出の経路や汚染状況を確認するための基地内での調査ができずにいる。米軍基地内への立ち入りを早急に実現して汚染状況を特定し、汚染の広がりを防ぐ対策をとることが必要だ。
 県は昨年12月に普天間飛行場周辺3地点、嘉手納基地周辺1地点、糸満市内1地点の計5地点で、土壌を採取・分析した。このうち普天間第二小で採取した表土からはPFOSが1グラム当たり6.6ナノグラム検出され、比較対象として採取した糸満市内の同0.4ナノグラムを大きく上回った。
 普天間飛行場ではPFASを含む泡消化剤が基地の外まで流出、飛散する事故が繰り返されてきた。普天間第二小付近にも飛行場からつながる水路があり、飛行場から流出した水が運動場に流入したことも確認されている。
 子どもたちの成長の場である学校に有害物質が存在する状況は一刻も早く解消しなければならない。地下水を汚染する恐れもあり、深刻だ。
 ただ、国内には土壌に関するPFASの基準はなく、今回の調査結果について県は「安全性の評価は困難だ」とする。しかし、基準がないからといって放置はできない。
 環境保全や化学物質の安全性に関して「予防原則」の考え方がある。健康や環境に重大で不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合には、因果関係が科学的に十分証明されていなくても、影響を避けるための対策を予防的に講じるという考え方だ。
 PFASは自然環境でほとんど分解されず、体内に蓄積する。発がん性や出生時の体重に影響が生じる恐れなどが議論されている。
 米マウントサイナイ医大の研究チームは、PFASのうち一部の血中濃度が高い人は、新型コロナウイルス感染後の抗体価が低い傾向にあるとの分析結果をまとめた。PFASで免疫の働きが阻害されることを示している。
 健康被害が指摘される中で、PFASについては予防原則に立って、人体に取り込まないための対策や調査が求められる。国際的にはPFAS規制を厳格化する動きが進んでいる。日本でも土壌や水質の環境基準値の策定を急がなければならない。
 玉城デニー知事は2023年度の県政運営方針で「県民の健康に関わる極めて重要な問題」との認識を示し、県は23年度にPFASに関する水質・土壌調査を全県で行う計画だ。本来は、米軍に基地を提供している日本政府の責任で調査を実施すべきだ。