<社説>県民投票から4年 民意示した意義揺るがず


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票から明日で4年となる。投票者の7割超が埋め立て反対の意思を示したにもかかわらず、政府は新基地建設を止めようとはしない。しかし、県民の投票行動によって沖縄の民意を明確に示した意義はいささかも揺らいではいない。改めてそのことを確認したい。

 投票に至るまでの経緯を振り返っておきたい。4年前の県民投票は議会や政党、労働団体などによる呼び掛けが出発点だったわけではない。学生や有識者、企業人、沖縄戦体験者が参加する「辺野古県民投票の会」の活発な議論と署名活動、条例直接請求によって動き出した。
 実現への道のりは険しかった。県民投票に反対する首長もおり、県議会会派の対応も分かれていた。
 それを「県民投票の会」の粘り強い働き掛けで膠着(こうちゃく)状態を解いていった。「県民投票の会」代表のハンストによる訴えも県民の共感を呼び、県民運動のうねりで投票実現にこぎ着けた。
 新基地建設を強行する政府の専横に対峙(たいじ)するように、投票によって県民の意思を表明した。その歴史的意義は大きい。沖縄の現状を見据え、未来を選択する自己決定権を行使したのである。
 新基地建設に反対する沖縄の訴えは、市民レベルから築き上げた民主主義手続きに支えられている。政府はその意味を軽視してはならない。
 玉城デニー県知事は、昨年5月に発した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」や、2023年度の県政運営方針で知事選と並んで県民投票の結果に触れた。
 特に「建議書」は、辺野古新基地における政府対応を通じて「民主主義や地方自治の問題など、民主主義国家の根幹にかかわる重大な問題を顕在化させた」と指摘し、民主主義の手続きによって示された県民意思が顧みられない現状を批判した。この問題は現在、安保政策や「台湾有事」を名目とした軍備増強と絡んで日本全体を覆っている。
 日本の防衛政策を転換した安保関連3文書が国会審議を経ないまま閣議決定され、日米安全保障協議委員会(2プラス2)の場で再確認されたことは、その一例である。政府は国民に問わないまま国のかたちを変えたのだ。
 先島では地域住民の不安をよそに軍備増強が急速に進んでいる。米国による気球撃墜を契機とした武器使用要件を拡大する自衛隊法の解釈変更にいたっては国会に諮らず、閣議決定すらしていない。民主主義がなし崩しにされているのだ。
 このような国の動きを沖縄からけん制するためにも、私たちはいま一度県民投票に立ち返りたい。国の暴走に歯止めをかけるのは民主主義の手続きを踏まえた県民、国民の明確な意思表明以外にはないのである。