<社説>入管法改正案再提出 反省なき改悪でしかない


社会
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 外国人の収容・送還に関するルールを見直す入管難民法改正案が国会に提出された。収容施設での死亡や裁判での敗訴が続き、国連の自由権規約委員会から処遇改善の勧告も受けた。それにもかかわらず、政府は抜本的見直しをしなかった。反省なき改悪案と言わざるを得ない。

 改正案のポイントは、難民認定申請の回数を原則2回に制限、収容に代え「監理人」の下での生活を認める「監理措置」の新設、紛争地からの避難民対象の「補完的保護対象者」の新設などである。
 出入国在留管理庁はホームページで、法改正の必要性として、退去を拒む外国人の増加、収容の長期化、仮放免者の逃亡の増加などを挙げている。改正の考え方として(1)保護すべき者を確実に保護する(2)その上で、在留が認められない外国人は速やかに退去させる(3)退去までの間も、不必要な収容はせず、収容する場合には適正な処遇を実施する―としている。
 2021年に廃案になった当初案から修正したのは、監理人の定期的な報告義務をなくすなどごく一部だ。最も批判が強かった難民申請の回数制限は変わっていない。
 難民申請中は強制送還が停止されるため、収容者が申請を繰り返し、収容が長期化するというのが政府の主張だ。しかし、複数回の申請で認定される事例、人道的配慮によって在留を許可される事例がある。回数制限は送還すべきでない人を送還する危険がある。難民認定の質を向上させる方が先ではないか。
 そもそもこの問題は、人身の自由の制限は必要最低限度でなければならないのに、そうなっていないという制度の根本的欠陥にある。刑事手続きと比較すると明白だ。
 刑事手続きでは、勾留は裁判官による事前の令状審査があり、準抗告など不服申し立てもできる。収容期間も逮捕72時間、起訴前勾留20日、起訴後勾留2カ月(以後1カ月ごとに更新)とされている。ところが入管では、司法審査はなく入管当局のみの審査・判断で、要件などもあいまいだ。審査期間も収容期間も事実上無制限だ。さらに行政手続法、行政不服審査法の適用除外のため、標準処理期間も審査基準も明らかではない。
 改正案提出を受け、日弁連はただちに反対の会長声明を出した。政府が「原則収容主義」を改めたと主張する「監理措置」も、収容か監理措置かの選択が入管の判断にゆだねられる上に、監理人が支援の立場と相いれない役割を強いられると批判している。
 日弁連は一方で「実効性ある収容代替措置」として、国が関与して衣食住を提供するか一定条件の下での就労を可能にするなど、国際基準の制度を提案している。
 帰国を拒む人にはさまざまな事情がある。全ての人の人権が尊重される制度から程遠い改正案は、再び廃案にするしかない。