<社説>うるま市議選当選無効 再発防止へ重大決意を


社会
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 2022年10月2日投開票のうるま市議選で、県選挙管理委員会(県選管)の再検査の結果、次点の候補者が4票増え、最下位当選の議員の当選を無効とする裁決が出された。民主主義の根幹をなす選挙への信頼を失墜させる事態である。原因究明と再発防止に重大な決意が求められる。

 開票結果は、最下位当選の天願浩也氏が案分票を加えて876.197票、次点の伊礼正氏が874票と、2票差だった。県の裁決は、「いれい」と書かれた2票が他候補の得票に紛れ込んでいたとし、また無効票のうち「イでイ」「いてい」と読める2票は「イレイ」「いれい」の誤記で、判例上、伊礼氏の票となるとした。そのため、伊礼氏が878票で当選となり、天願氏の当選を無効とした。
 驚くのは票の紛れ込みだ。開票作業では何重ものチェックが行われているはずだ。うるま市では、その4年前の市議選が知事選、県議補選と重なったため作業終了が午前3時25分と大幅に遅れ、厳しい批判を受けた。今回はスムーズだったが、その裏で重大なミスを犯していた。人員増や作業内容変更を検討するとしているが、前回以後の改善策が妥当だったのかも検証する必要があろう。
 もう一つの問題は、市選管が昨年12月に伊礼氏の異議申し立てを棄却していたことだ。僅差で次点となった候補者による異議申し立ては珍しくない。きちんと検証をしていれば、選挙から5カ月もたって県選管の裁決を受けるまでもなかったのではないか。
 2006年の名護市議選では1票差で次点となった候補が異議申し立てをした。県選管は、最下位当選者の投票用紙の名前に傍点が振られていたことを「他事記載」として無効票とし、2人の得票を同数とする裁決をした。この裁決が最高裁で確定し、開票から1年2カ月余り後にくじ引きで決着した。
 今回、県選管は無効票のうちの2票を有効票としたが、無効票のままなら案分票の差で天願氏当選は変わらない。この点を争う裁判もあり得るだろう。また、県選管の裁決が確定しても、当落逆転によって2人が被った損害は小さくなく、補償、賠償をどうするのかも課題になる。
 いずれにせよ、開票時に的確な作業と判断が行われていれば、今回の事態は防げたはずだ。疑問票を精査するはずの立会人が見逃したことにも疑問が残る。開票作業の中で未然に防げなかったことが悔やまれる。
 今回のうるま市議選は、投票率が初めて50%を割り、過去最低を更新した。地方議員のなり手不足も全国的な問題になっている。そんな中での痛恨の事案となった。開票作業の手順、疑問票・無効票の適切な扱い、異議申し立てを受けた際の検証方法など、抜本的な改善が必要だ。全市町村で改めて開票作業の在り方を点検してもらいたい。