<社説>普天間返還合意27年 「抑止力の島」を拒否する


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 米軍普天間飛行場の全面返還に日米両政府が合意して、きょうで27年を迎えた。返還のめどは立っていない。ここまで問題が長引くことを多くの県民は予想しなかったであろう。

 沖縄の民意に背を向け、日本政府は辺野古新基地建設の工事を続けるが、大浦湾側にある軟弱地盤によって工事の長期化は避けられない。政府の試算によると、完成は2030年代という。その間、飛行場を発着する米軍機の騒音に周辺住民は苦しみ続ける。悲惨な事故も起きかねない。
 この不条理は基地移設を条件とした日米合意によってもたらされたものであり、一日も早く解消されなければならない。普天間飛行場の無条件返還に向け、両政府は交渉を始めるべきだ。まずは垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの撤去を含む危険性の除去に着手する必要がある。
 普天間問題のこう着状態が続く一方で、宮古、八重山、与那国で自衛隊の軍備増強が進められた。昨年末に閣議決定された安保関連3文書は沖縄にさらなる基地負担を強いるものでしかない。これ以上、沖縄が「抑止力の島」として扱われることを拒否する。
 普天間飛行場の周辺住民は有機フッ素化合物(PFAS)の問題でも不安を抱えている。県環境部による土壌調査で普天間第二小学校で高い値のPFASの一種、PFOSが検出され、基地からの流出が疑われている。
 ところが、日米地位協定が壁となり、基地への立ち入り調査が実現していない。玉城デニー知事は3月の訪米で、基地立ち入り調査を米政府担当者に訴えた。住民の健康に関わる問題を放置してはならない。両政府はただちに基地内調査の実現に向け、協議を始めるべきである。
 これまで県や自治体、基地周辺住民らは具体的な要求を掲げ、日米両政府、特に日本政府と話し合いを重ねてきた。しかし、沖縄の要望が顧みられることは少なかった。
 1996年4月の返還合意以来、県民は選挙や県民投票、県民大会などの形で民意を繰り返し表明してきた。しかし、政府は沖縄の民意を無視し、国策を推進してきた。法廷において司法は政府に追随し、沖縄の訴えを退けてきた。残念ながら、このような沖縄の厳しい状況に対する国民の理解も十分とはいえない。
 沖縄から発する声は日本本土にとっては小さいかもしれないが、沖縄の自己決定権や県民の生存権に基づく確かな声だ。それをないがしろにしてよいはずがない。日本の民主主義が問われている。
 本土では統一地方選の前半戦が終わり、今月23日には衆参両院補選の投開票が控えている。各候補者や政党は沖縄の基地問題を論じてほしい。これ以上沖縄に負担を押しつけてよいのか、国民の判断を仰ぐべきだ。それが民主主義の基本である。普天間の問題は沖縄だけの問題ではない。