<社説>下地島米軍機飛来 「屋良覚書」の効力高めよ


社会
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 「屋良覚書」がないがしろにされている。下地島空港の軍事利用に歯止めをかけるためにも「覚書」の効力を高める必要がある。

 8日に宮古島市の下地島空港に緊急着陸した韓国の米空軍烏山(オサン)基地所属のF16戦闘機2機が1週間も居座り続けている。県によると、不具合による米軍機の下地島への緊急着陸はほとんど前例がない。米軍はC12輸送機を派遣したが、銃を携行した米軍の警備要員4人も含まれていた。
 日本政府は「米軍の民間空港への出入は日米地位協定上認められている」との立場を示す。玉城デニー知事も「緊急事態に対応するためなので使用を許可している」として今回の戦闘機着陸には反対していない。
 しかし、下地島空港は民間機が発着する県管理空港である。「緊急」が名目とはいえ、ここまで長期間、米戦闘機が駐機してよいのか。武器類まで堂々と持ち込む行為は到底容認できない。ただちに空港を去るべきである。
 下地島空港に関しては沖縄が米統治下にあった1971年8月、琉球政府と日本政府が「軍事利用をしない」旨の「屋良覚書」を交わしている。米国も「覚書」の存在は認識しているはずだ。それでも給油などを理由とした米軍機飛来が繰り返されてきた。
 今年1月、米海兵隊は訓練による下地島空港の使用を県に届け出た。県が「屋良覚書」などに基づき使用自粛を求めたことから訓練は中止されたが、米軍が演習拠点として使用する機会をうかがっていると考えざるを得ない。
 今後は「屋良覚書」の効力や拘束力が問われよう。半世紀以上前の文書だが、日米両政府が勝手に死文化扱いすることは許されない。下地島空港の軍事拠点化をもくろむような動きに抵抗できるよう「屋良覚書」の条例化などを検討すべきだ。
 政府が昨年12月に閣議決定した安保関連3文書は平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を盛り込んでいる。米国は「重要な進化だ」と歓迎しており、今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)はこの方針を日米双方にまで拡大することを確認した。
 先島地方の軍備増強が進んでいる。「台湾有事」を想定し、3千メートル級の滑走路を持つ下地島空港の軍事利用が拡大する恐れがある。
 敵基地攻撃の拠点となる飛行場は有事の際に攻撃目標となることは過去の戦争で証明されている。米軍機や自衛隊機の飛来が常態化すれば、周辺国を刺激し、緊張を高めることになる。それは県民の生命と財産を守る上で得策ではない。何よりも下地島空港と共に暮らしてきた宮古島市民の安全を脅かすことになる。
 日米両政府は下地島空港をはじめ南西地域の軍事拠点化を加速するのではなく、紛争を起こさないための外交努力を徹底して追求すべきだ。