<社説>復帰後初の人口減 官民で暮らしの質維持を


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 いよいよ「その時」が来た。沖縄の人口が減るという現実を見据えた県土づくりを模索する必要がある。官民一体による取り組みが必要だ。

 総務省が発表した2022年10月1日時点の都道府県別人口推計で、沖縄は21年同日から145人減の146万8318人となった。1972年の施政権返還(日本復帰)から50年の節目で初めて人口が減少した。
 県の「22年人口移動報告年報」でも県人口動態の「自然増減」は年間を通じて初の減少となった。新型コロナウイルス感染症による結婚や出産控え、高齢化やコロナ禍による死亡者増が影響した。
 全国一の高出生率に支えられ、人口が増え続けるという沖縄県像は修正を迫られている。他県では人口減の中で暮らしの質を維持するための取り組みが進んでいる。沖縄も人口減に伴う諸課題に対応しなければならない。
 沖縄の人口は25年ごろにピークを迎え、30年代から人口減社会に入るという分析があった。コロナ禍の影響で早まった可能性がある。
 懸念されるのは社会サービスの維持である。総人口が減少すると自治体税収が減り、インフラや地域交通の維持が困難となる。教育、医療・福祉など多方面へ影響が出る。地域コミュニティーも保てなくなる可能性がある。沖縄の場合、離島や本島北部の自治体はより深刻であろう。
 県は、人口戦略と位置づけている「沖縄21世紀ビジョンゆがふしまづくり計画」で、人口が減っても生活の質を維持して住民が暮らしやすい持続的な地域づくりの推進を提起した。
 人口の減少で懸念されることとして同計画は(1)きょうだいがいないことが「当たり前」となり、少子化が一気に進行する(2)社会保障をはじめとする社会システムの維持が困難となる(3)地域社会を支える活動の担い手が減少し、離島などで地域社会の崩壊につながる―と列記している。
 その上で、人口が減少しても「安心して結婚し出産・子育てができる社会」「世界に開かれた活力ある社会」「個性を生かした持続可能な社会」を目指し、結婚・出産や子育てセーフティーネットの充実、雇用機会の拡大、定住条件整備などの施策を掲げる。
 これらの施策は行政だけではできない。官民が連携し、人口減が進む中で社会システムを守るための議論と実践が求められる。地域コミュニティーも参画し、人口減を乗り越える沖縄の将来像を描かなければならない。
 他県ではデジタル技術を生かした暮らしを維持する試みが本格化している。沖縄でも参考になるだろう。
 県は本年度、「ゆがふしまづくり計画」を改定する方針だ。人口減によって地域の活力まで失ってはならない。予想よりも早く進む人口減にどう対処するか、活発な議論が急がれる。